教養の高い話題についていけるよう、英語で会話の引き出しを作っておくことを目的とした本です。知的さを感じさせる言い回しや単語の紹介の他、国際社会や日本文化、政治や法制度、哲学に至るまで、多岐に渡るトピックが取り上げられています。
実質的な難易度は英検準1級〜1級程度
テーマは15個で、「平和と祈り」、「伝統と文化」、「思想と哲学」、「医療と健康」、「自然と環境」、「科学」、「宇宙」、「食糧」、「税制」、「社会とライフスタイル」、「ジェンダー」、「子ども」、「政治」、「司法」、「経済」から成ります。それぞれのテーマにちなんで特定のトピックを扱っており、トピックの数は40個にもなります。
英文はいずれも会話形式になっていますが、扱うテーマの高度さや語彙の多さもあって、難易度は英検ならば準1級以上、TOEICなら700点以上程度の難易度があると言えるでしょう。英文と日本語は左右のページで対訳になっています。
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クリストファー・ベルトン『日本人のための教養ある英会話』 |
さらに深く学ぶためのコラムも充実
本書は英語学習それ自体というよりも、会話の引き出しを増やすための本としての色が強いものです。そのため、文法的な解説は一切無く、単語の紹介も最低限のものになっており、英検準1級レベル以下の比較的易しい単語レベルに関しては紹介すらされていません。
しかし、それぞれのテーマやトピックに関連する用語の英訳のまとめや、一部の用語には解説があり、読者の探究心や好奇心を刺激し、それに応えてくれる構成になっています。
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クリストファー・ベルトン『日本人のための教養ある英会話』 |
短くエッセンスが凝縮された会話文で会話の引き出しを増やす
実際にそのトピックについて2者が会話する様子をテキスト化しているため、ある意見に対する反論や、ある考え方の強い主張がどのように行われているのか、それがどういった内容なのかについて具体的に知ることができます。
テーマやトピックの紹介という面がある以上、会話文は時に説明口調に感じられる部分もあります。しかしその分、様々な事柄について理解を深めることができ、同時に高度な英文や語彙について理解することもできるため、英語学習の上級者であれば非常に楽しく読むことができる本と言えるでしょう。
学習用のCDらしい綺麗な発音のCDが2枚付属
吹き込み音声の速度は約150~160語/分で、語学書の付属CDとしては標準的な速度です。
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クリストファー・ベルトン『日本人のための教養ある英会話』付属CD(2枚組) |
外国人のAさんと日本人のBさんが会話しているシチュエーションですが、Bさん役もネイティブスピーカーが発音しています。男性と女性が交互に発音しています。学習用のCDらしい綺麗な発音で、特に聞き取りにくさは感じませんでした。とても良質なリスニングCDになっています。
教養のある会話や、ディスカッションの準備材料としても有効
本書は高度な英会話ができるようになることをその主軸としていますが、こうしたテーマについて造詣を深めておくことは、日本語での会話でも役立つに違いありません。
もしも貴方が国際人としての常識が試されるような場で英会話をするような機会や、そのようなテーマを扱うディスカッションに参加する機会に恵まれているのなら、その下準備として本書はうってつけと言えるでしょう。そのほか、時事問題を問われる傾向にある英検1級や、国連英検A級などの高度な英語試験の面接対策にも役立ちます。
もちろん、ネイティブの全員がこうした高度なテーマの会話をすることを好むわけではありません。そのため、本書を読めば英会話ができるようになる、ということではありません。本書はあくまで、ある程度の英会話ができる人を対象とし、より高度な知識を身につけ、それを表現しながらコミュニケーションに活かすことができるようになることを目的としているのです。
まとめ
- 高い教養を要求されるテーマについて英語で意見交流できるようになる。
- 英語学習の上級者を対象としており、文法や語彙の細かな解説はない。
- テーマを掘り下げたコラムが充実しており、自分なりの意見を構成するのに役立つ。
- 「英語で何を語りたいか」について考えるレベルの学習者向き。