これから初めて英語の文法を学ぶ、という人に向けて書かれた英文法の入門書です。非常に平易な内容になっていますが、基本的な文法事項や用語の意味が解説されており、良い入り口となり得る本と言えます。
同著者の『英文法解説』は参照性の高い辞典としての属性が強いものでしたが、本書は頭から最後まで通して順に読んでいくことを前提としています。
中学校レベルの文法から高校卒業程度の文法レベルまで網羅
『英文法の基礎』は、英語の文というものがどういう成り立ちになっているか、という基本的な所から始まります。中学・高校の文法がどうにも怪しいという学習者にも入りやすい導入と言えるでしょう。
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江川 泰一郎『英文法の基礎』 |
全体の内容としては全部で32の項目があり、最終的には高校卒業程度の文法を習得できるようになっています。必要に応じて本文中で英語の例文が用いられていますが、その例文の内容も難しくなく、例文の難易度からくるストレスはほとんど感じません。
平易な内容に押さえるために詳細な説明が省かれてしまっている点も見受けられますが、初めて英語に触れるという人が読むには申し分ない情報量と言えるでしょう。
もしも本文中で気になる点があった場合は、同著者の『英文法解説』を参照すればより深く文法を理解できますが、『英文法解説』は文法書・研究書といった面が強いので、初学者にすぐに必要になるものではありません。
やや学習者を選ぶシンプルなレイアウト
レイアウトは非常にシンプルなものとなっており、人によっては肌に合わないと感じるかもしれません。
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江川 泰一郎『英文法の基礎』 |
後半になるとやや複雑な文法事項も扱うようになっていくため、こうしたレイアウトだとモチベーションの維持が難しい場合もあるでしょう。しかしシンプル故に余計な装飾がなく、頭から読んでいけば重要な点が自ずと見えてきます。
新書のように読むのに適している
この書籍はあくまで英文法の入門書としての位置づけであり、本格的な学習書としてはやや足りない部分も見られます。そのうちの1つに、練習問題が載っていないという問題があります。
こうした点から、本書は「これから英語を勉強する」という人が、「そもそも英語はどういうものなのか」ということをざっと概観するのに最適な本と言うことができるでしょう。
また、読み進めていく上で本筋と関係の無いところで疑問点が出ないよう、単語や英文の意味はその都度必要に応じて説明されています。この説明も詳細なものではなく簡単なものですが、初学者が押さえておくべき意味をしっかりと押さえているため、特に不自由することはないでしょう。
発音記号だけでなくカタカナ発音が掲載されている
本書では必要に応じて単語の意味が解説されていますが、その際には発音記号だけでなくカタカナで発音が示されています。各英文で使用されている単語は一般に利用頻度が高く、正しい発音を身につけておくことが重要であるため、こうした配慮もありがたい点です。
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江川 泰一郎『英文法の基礎』 |
まとめ
- 初めて英語を学ぶ人が英語の構造を概観するための本。
- 初学者にとって充分な情報量がコンパクトにまとめられている。
- シンプルなレイアウトで新書のように通して読むことができる。
- 段階的に高度な情報を扱うことで確実なステップアップが可能。