これまでに英語を勉強したことのない人に向けられた、ゼロベースから英会話ができるようになるための本です。基本的なフレーズを学ぶ第1部と、実際のシーンを意識して学ぶ第2部に分かれています。
構文をメインとした英会話
本書は構文を軸にしていくことを目指しており、詳細な文法解説はされていません。特に使い勝手の良い構文を第1部で紹介し、それを覚えて、必要に応じて単語と構文を使い分けることで最低限の英会話ができることを目標としています。
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妻鳥 千鶴子『ゼロからスタート英会話』 |
構文による英会話は、文法事項を勉強せずに意図を伝えることができるため、即効性の意味では非常に有効です。そのため、急に海外旅行に行くことになり、最低限の意思疎通だけしたい、といった場合ならば、本書は効果があると言えます。
しかし、柔軟に英語を使いこなしたい、単に簡単なやり取りをするだけでなく、冗談を言い合うなど、もう少し複雑な会話をしたい、という場合には、本書だけでは不十分でしょう。
また、文法事項について触れられていないため、理由や理屈がないとどうしてそうなるのか納得出来ない、といったタイプの学習者にはオススメできません。
シーンごとのイメージトレーニング
第2部では、日常的にありそうなシーンを元にして、会話のイメージトレーニングを行っていきます。ここでも様々なフレーズが紹介されており、それら全てのフレーズに慣れておくことで、日常会話の理解力もぐっと増すことでしょう。
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妻鳥 千鶴子『ゼロからスタート英会話』 |
しかし、やはり文法事項についてはほとんど触れられておらず、フレーズも出てきたものを単に「こういう意味で、こういうときに使う」という程度に取り上げられているに過ぎず、詳細な解説は期待できません。
また、こうしたフレーズを全て暗記する、というのも現実的ではなく、フレキシブルな英会話を目標とするならば、やはり不十分と言わざるを得ません。また、訳文として掲載されている日本語もやや不慣れな印象で、人によってはモチベーションを奪われるかもしれません。
ただし、付属しているCDと共に実際のシーンをイメージすることで、実際に自分が英語を話すべき場面に立ったときに慌てずに済む、という効果は確かにあります。
どのように勉強するべきか
以上のような特徴から、本書は「とりあえず意思疎通できるだけの構文を覚えたい」というような人にはオススメできますが、「がっつりと英語を勉強したい」という人には向かない本と言えます。関係代名詞など、網羅されていない文法事項も少なくありません。
「もう一度英語を勉強したい」と考えたときに、最初のとっかかりとして取り組むには良い本です。本書で忘れかけている英語の構文やフレーズをもう一度思い出して、それから文法書やより詳細な解説が載っている英語教材に進むことで、スムーズに勉強し続けられることでしょう。
ラジオ講座のように単独で学習できるように工夫されたCD
テキストの「会話のカギ」というコーナーの説明文を日本語で読み上げ、その後に掲載の英文を読み上げるスタイルで、ラジオ講座のようにCDだけで学習できるように工夫されています。
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妻鳥 千鶴子『ゼロからスタート英会話』付属CD(1枚組) |
逆に言うとある程度慣れた英語学習者の場合は、日本語の部分がうっとうしいと感じるでしょう。これまで全く英語を勉強したことがない学習者や大人のやり直し英語用としては問題ないと思います。学習が進んだら、英語だけの吹き込みCDが付属した教材に切り替えて、英語だけを聴く時間を増やしていきましょう。
まとめ
- 文法ではなく構文から英会話に取り組むための本。
- 文法事項はほとんど解説されていないが、その分取っつきやすい。
- 長くブランクが空いている学習者が英語をやり直す本としてお勧め。