英文を正しく読み解くための参考書です。著者は英語参考書の分野では有名な中原道喜氏。ハイレベルの長文読解が必要な人におすすめです。
英語上級者をめざす人向け
まずは巻頭の「読解力テスト」を読んでみると、この本を使いこなせるかどうかが判断できると思います。1問目に、「次の英文を日本語に訳しなさい。It is the thought that counts.」とあります。単語自体はどれも初歩的なものですが、すぐに意味を理解できる人はあまり多くないでしょう。
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中原 道喜『新英文読解法―本格的な読解力を確実に』 |
訳の例として、「大切なのはこめられた思い(気持ち)なのです。」とあります。なぜそのように解釈できるのか、筆者による解説を読むことになりますが、基礎的な文法知識が身についていないと、その内容についてじゅうぶん理解できないかもしれません。
本書で学ぶには、少なくとも高校生レベルの英文法が身についていることが必要です。5文型の形をすぐに判断できるとか、あるいは動名詞と現在分詞の違いを理解できるといった人でないと、解説そのものがわからないという状況に陥ります。
高校英語レベルは学習済み、そのうえで英文解釈の力を伸ばしたいという人――たとえば国公立大・難関私大を目指す受験生、また英検準1級以上やTOEFLなど上級資格受験者、そして通訳・翻訳など英語のプロを志す人ならぜひ手にとっていただきたい本です。
第一印象は地味な参考書
最近は参考書も多色刷りのものが多いですが、本書は一色刷りで、文字でびっしり埋まっています。イラストなどもなく、地味な印象を受けます。
構成としては、パート1~3に分かれており、全部で200の課題文が載っています。そのうち100問を有するパート1に関しては、「無生物主語」「関係代名詞」「比較」など、文法項目ごとに内容が整理されています。課題文は、短めの文章から徐々に長く難しくなっていき、パート2は70問、長文ばかりのパート3は30問です。
ページレイアウトは、見開きで左ページに課題文、右ページにその和訳と簡単な解説という形です。
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中原 道喜『新英文読解法―本格的な読解力を確実に』 |
難しい語句はセクションごとにまとめて後述されています。
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中原 道喜『新英文読解法―本格的な読解力を確実に』 |
読むと感動する、格調高い課題文
この本の特徴として、課題文とその訳文が素晴らしいということがあげられます。本書の課題文は、古今東西の諺や名著、歴史的スピーチなどから引用された名文のオンパレードです。テーマは哲学、教育、自然科学や社会問題など多岐にわたり、英検のエッセイやスピーチの参考にするにも役に立つと思います。
とくにおすすめのポイントとしては、大学受験や資格試験などを控えて勉強している人にとって、励まされたり、奮起させられたりという文がたくさん出てくることです。音読するにしろ、筆写や暗記をするにしろ、心に響く文章は強く印象に残り、学習するモチベーションも上がります。
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中原 道喜『新英文読解法―本格的な読解力を確実に』 |
「The harder you work, the luckier you get. 一生懸命努力すればするほど、運もついてくる。」――勉強に疲れを感じながらページをめくって、たとえばこんな文が目に飛び込んできたなら、ふと元気づけられるように思う人もいるでしょう。この本で学びながら、ぜひ“お気に入りの文章”を見つけていただきたいと思います。
まとめ
- 難関大学やハイレベル資格試験受験者、英語に関わるプロをめざす人向けです。
- 地味ながら、硬派で内容の濃い参考書。英検等のエッセイ・スピーチ対策にも適しています。
- 課題文と訳文の質の高さが特徴。学びながら、感動する文章に出会えます。
とても地味な本ですが、段階的に長文を読むことで読解力を磨ける良書です。特にPart IIIの長文は、英検で言えば準1級以上の高度な語彙が登場し、読み応えがありますね。大学受験生がこの本をやりきれば、最難関大学でも十分に射程に入ることでしょう。