日本語の語彙力が低下している?
塾で生徒たちの会話を聞いていると、何かあるとすぐに「やばい!」のひとことが出てきます。「すごい」「びっくりした」や、「おもしろい」「大変だ」も、みな「やばい」で用が足りている様子です。ひとつでまかなえて楽なのは確かでしょうが、あまりに簡略化しすぎでは?と思うこともしばしばです。「やばい」に限らず、最近は全体的に語彙が少なくなっているような気がします。
この「語彙の少なさ」は、英語嫌いの生徒に非常によくみられる傾向といえます。英語以前に、まず日本語でも不自由しているのです。
たとえば中学で学ぶ「stay」という単語。「滞在する」という意味ですが、「先生、『タイザイ』ってどういう意味?」…という中学生はよくいます。「どこかにとどまること、居ること、だよ」と言ってはじめて「…ああ、そうなんだ」という感じです(実は「とどまる」という言葉でもアヤシイ子もいました…)。この生徒は「stay」を覚えるために「とどまる・滞在する」という日本語も、同時に覚えなければならないわけですね。
文法用語が理解できていないと…
また、文法用語の理解ができていないことも気になります。たとえば「私は犬を飼っている」という文の主語は何?と聞くと、「犬!」と答えた生徒がいてびっくりしました。「だって、これから犬の話をするのでしょ?なら、犬が主人公だから主語は犬だよね」と自信満々で言われたときには「そういう理屈か…!」と逆に感心してしまいましたが…そんなのんきなことを言っていられる場合ではありませんね。
※「主語」は、「誰々が、~する」という文において“動作の主体”、つまり「誰々が」にあたる部分です。「犬を飼っている」のは「私」であって、「犬」ではありません…念のため…。
「主語」や「動詞」などの用語について意味をきちんとわかっていなければ、中学校で習う文法事項を理解することは難しいです。こうした言葉は、小学校の国語の授業で習います。そのため、中学校ではいちいち「主語とは何か」と細かく説明せずに授業が進むこともよくあります。用語がわからない状態で新しい文法事項を教わっても、ちんぷんかんぷんのままになるのは当然でしょう。
「言いかえ力」は国語の力
中学生だけでなく、大人が英会話学習をする際にも、国語力の有無で差がつくと感じることがあります。というのも、英会話の場合は学校のテストとは違い、自分の言いたいことが伝わればよいので、正解はひとつではありません。たとえば旅先で駅への道を聞きたいとき、どう言えばよいでしょうか。
「○○駅はどこですか」はもちろん、「○○駅に行きたい」、あるいは「○○駅を知っていますか」でもいいわけです。自分の知っている単語・フレーズや、構文のパターンを使って、伝えたいことをいかに表現するか。つまり「言いかえ力」が役に立つのです。これが得意な人は、できるだけ簡単で、汎用性のある英文フレーズを覚えて、使いまわそうと考えます。省エネ型学習ができるわけです。
また、そのまま英語に訳しにくい言葉を言いたいときにも、「言いかえ力」がものを言います。たとえば「よろしくお願いします」はどう訳せばいいでしょう?これは時と場合によって「一緒にお仕事できてうれしいです」であったり、「お手数をおかけしてすみません」あるいは「あなたにおまかせします」であったりします。
このように、そのまま訳せない言葉は、具体的にどういう意味か言いかえる力が必要だということです。これは国語の力だと私は思います。こうした力のある人は、英会話も間違いなく上達が速いのです。
国語の力をもっと利用しよう
英語は暗記科目だ、とよく言われます。単語やフレーズをひたすら丸暗記するしかない、と思われがちですが、前述のように国語力で補える部分も大いにあるのです。
また、難しいと敬遠されがちな文法の学習も、最近はわかりやすく書かれた参考書がたくさん出ています。自分のレベルに合わせた参考書を選ぶことも、国語の力を生かすひとつの手段です。参考書を買うときには、ぜひ、いくつかの参考書のページを開き、説明を見比べてみてください。自分にぴったり合った参考書を見つけることができれば、あなたの英語学習も少しばかり楽になるかもしれません。
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