『受験英語からの英会話 上級編』は、高校で学習する文法知識を実際の英会話で使うための英文法・英会話教材です。
受験英語からの英会話シリーズでは、文法知識が中学校レベルの初級編、高校標準レベルの中級編も出版されており、シリーズ内では最も難易度が高い本です。
ビジネスシーンを想定した実践的な英文を収録
各章の構成は以下の3ステップの通りでシンプルなものになっています。
Step 1 思い出そう
その章で扱う文法知識を確認します。簡単な英作文問題による練習問題がついています。
![]() |
![]() |
Z会『受験英語からの英会話 上級編』 |
Step 2 聞いてみよう
全章を通じたストーリー仕立てのスクリプトを聞き、リスニングの練習をすることが目的です。本文の一部は空欄になっており、ディクテーションの練習も含まれています。
![]() |
![]() |
Z会『受験英語からの英会話 上級編』 |
Step 3 話してみよう
その章のターゲットセンテンスのシャドーイングのほか、同じ文法知識を使った会話文の瞬間英作文問題が収録されています。
![]() |
![]() |
Z会『受験英語からの英会話 上級編』 |
シンプルに知識の確認、リスニングとディクテーション、シャドーイング、瞬間英作文という練習のステップを繰り返す流れになっており、学習しやすい構成です。
受験英語の英文法知識を確認しながら応用の利く会話力を養成
ネイティブではない私たちが英語をマスターするためには、英文法を理解したうえで、反射的に使いこなすことが重要です。
私は「脳で考えて聞いて話すのではなく、脊髄で反射するように無意識でできるようになるまで音読やシャドーイングを繰り返す」という練習をし、また勉強方法の質問を受けた場合にもそう答えています。
よくある「フレーズ集」の勉強も効果がないわけではないですが、発展させて「自由自在に言いたいことを言える」という段階に達するためには、やはり英会話であっても文法知識は必須です。
では、ネイティブではない人が知っている英文法知識とは何かとなると、やはり受験英語ということになってきます。受験英語の英文法は新聞や雑誌で見られる標準的な英語のルールですから英語を母語としない人にも通用するもので、考え方次第で広く応用が利くものです。
※「実際のネイティブの英会話ではそんなに難しい英文法は使わない」という意見もありますが、それも時と場合によります。日常会話で複雑な構文が出てくることも多く見受けられることです。そのため英会話、それもあらゆる場面で応用ができる会話能力を身に付けるためには、どうしても大学受験程度の英文法のマスターは必須となります。
※なお別のスピーチに関しての記事では、「あまり難しい文法知識や構文は使わない方が良い」ということを書いていますが、それは「不特定多数の人に伝えること」を目的としたスピーチやプレゼンの場合はシンプルな方が相手に伝わりやすいためです。文法知識が不要だというわけではありません。
本書の構成に従って文法知識の確認をしながら実際の英会話例文を聴き、ディクテーション・シャドーイング・瞬間英作文の3ステップを繰り返すことで効率の良い訓練ができます。
また、日本人が何年英語を勉強してもなかなか英会話が上達しない原因の一つとして、「高校までの授業の英文で出てくる和訳が、日常会話とはかけ離れた硬いものであるから」ということが冒頭で書かれています。
この点を矯正するように各章の内容も書かれていますから、読み進めていくうちに「これはこういうことだったのか!」という発見が多くあることでしょう。
スピード・語彙とも標準的な日常会話音声を収録したCDが付属
「Step 2 聞いてみよう」の会話音声では、約150語/分の速度で発音されています。いわゆるナチュラルスピードの音声で、学習書としては標準的なものです。
この本はシリーズでは上級編であっても、日常会話のテキストです。他の書籍で言えば『アメリカ口語教本 上級用』くらいの難易度となっています(TOEIC550~700程度)。
ビジネス英語系の会話本と比較すれば語彙レベルは高くないので、知らない語彙が原因で理解ができないという事態にはならないでしょう。高等学校で勉強する語彙が身に付いていれば大丈夫です。
![]() |
Z会『受験英語からの英会話 上級編』付属CD(2枚組) |
英会話の練習をしたい方、文法知識の確認をしたい方向け
英会話フレーズ集を中心に学習を進めてきたが伸び悩みを感じている方は、やはり文法力を軽視していたためであるという面があるでしょう。
急がば回れのたとえではないですが、一度基礎に戻って文法力をつけながら英会話練習をすることが、遠回りに見えても結局一番の近道です。英会話の伸び悩みを感じている方は本シリーズを手に取ってみて、自分に合うレベルの本から選んでみると良いでしょう。
上級編では副詞の挿入や倒置文などの、ある程度英語学習が進んでいる方であれば「読めるけれども自分で話すことはなかなかできない」文法事項を多く扱っています。そのためリーディングにある程度自信があって、実際のアウトプット力を伸ばしたい方向けの教材と言えるでしょう。
![]() |
![]() |
Z会『受験英語からの英会話 上級編』 |
他に英文法を一度確認したいが、新しい文法書などではなく、実際のフレーズやリスニングなどを通じて効率よくやりたい方にも適切です。
まとめ
- 受験英語の文法知識を英会話力につなげる英会話・英文法教材。
- 3ステップ構成の繰り返しで、効率よく英会話力を伸ばすことができる。
- フレーズ集で英会話の練習をしてきて、伸び悩みを感じている人にお薦め。
- 文法知識を効率よく確認することもできます。
珍しいZ会の英会話教材です。Z会といえば『速読英単語』『速読速聴・英単語』『テーマ別英単語』など英単語のイメージが強いのですが、実は色んなジャンルの参考書を出しているようです。Z会の本を買ったときに中に挟まっているブックレットを確認してみましょう。