英検1級かそれ以上の難単語を1000語習得できる教材です。在米経験20年以上の著者が、ネイティブスピーカーが実際に使っている難単語ばかりを収集したことで、極めて実用的な単語集に仕上がっています。
知っていると「通」な英単語が選りすぐられている
例えばレオナルド・ディカプリオが念願のアカデミー主演男優賞を受賞した『レヴェナント: 蘇えりし者』の原題は「The Revenant」。英語上級者でもなかなか目にしない単語ですが、本書の173ページには「revenant 黄泉の国から戻ってきた人、亡霊、長旅から帰ってきた人」と記載されています。
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向江 龍治『究極の英単語セレクション 極上の1000語』 |
個人的にはその左ページの「prig」も、洋画や海外ドラマでよく聞くもののなおざりにしていた単語でしたので、かゆいところに手が届くとはこのことだと感動しきりです。一般的なテスト対策用の難度の高い語彙ばかりを集めたものとは一線を画す、実用的な単語帳だと感じます。
長年の経験に裏打ちされた独自の英単語帳
筆者の向江龍治氏は、「米国の知識層がよく使ったり、ネイティブにピンときたりする」単語や表現を、コロンビア大学大学院で8年間政治学を勉強している間にノート8冊にまとめたそうで、そのノートをまとめてできたのがこの『究極な英単語セレクション』です。
個人的体験に根ざした独自の眼識によって収集された語彙は、難しいけれど確かによく聞き見聞きするものばかりです。「そういえばこの単語は気になっていた」という既視感が半端ではありません。上級の英語を目指す方の語彙力増強用として、ぜひ手にしていただきたい価値ある1冊です。
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向江 龍治『究極の英単語セレクション 極上の1000語』 |
挑戦しがいのある3つのレベル
語彙は以下の3つにレベルに分類されています。
【究極レベル1】大学教育を受けた米国人が日常的に使用する語彙
【究極レベル2】大学教育を受けた米国人がしばしば使用する語彙
【究極レベル3】大学院以上の教育を受けた米国人が、ここぞという時に使う語彙
前述の「revenant」や「prig」はレベル3に当ります。一流の雑誌や新聞を読みこなしたいと意気込む方は、レベル3を目指して取り組んでみてください!
具体的な例文がツボにはまる
米国人のシナリオ作家が吟味したという例文は、具体的でイメージを喚起しやすいのが特徴です。再び例を挙げますと、「eclecticism」(折衷主義)の例文は以下の通りです。
The Beatles’ White Album pondered a new era of eclecticism in pop music.
ビートルズの『ホワイト・アルバム』は、ポップ音楽における折衷主義の新時代を切り開いた。
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向江 龍治『究極の英単語セレクション 極上の1000語』 |
ビートルズの『ホワイト・アルバム』をご存じない方には、「え?」といった例文かもしれません。しかしビートルズ・ファンにとりましては、確かにあのアルバムには折衷主義的なところがあるかもしれない…などと考えさせられ、妙に記憶に残りやすい例文です。そもそも日本語の「折衷主義」という言葉自体が難しいので、例文を頼りに感覚的につかむ方が、何かと効率が良いのかもしれません。
他にも「fiend」(悪鬼、鬼のような人、~狂)の例文に『羊たちの沈黙』のハンニバル・レクターが持ち出されるなど、多少の欧米文化になじんだ方なら、楽しみながら単語を覚えられるはずです。『ゴッドファーザー』やマーティン・スコセッシ、ボブ・ディランやキース・リチャーズ、ヒラリー・クリントンやオバマ元大統領など、固有名詞や具体的な出来事に彩られた例文にクスリとしながら、洗練された英語表現を身につけましょう。
英検1級取得済みの著者でも知らなかったという語彙が集められていますので、それに準じた力をすでに身に付けた方におすすめです。
まとめ
- 米国人でも知識層が使う語彙が選りすぐられています。
- コンピューター統計では割り出せない、実際によく見聞きする語彙だけが網羅されています。
- 具体的かつカラフルで記憶に残りやすい例文です。
私も語彙には自信があって、究極レベル1と2ならほとんど知っていますが、究極レベル3は1~2割しか分かりません。旺文社の『英検1級 出る順パス単』やアルク『SVL究極の英単語 Vol.4 超上級の3000語』あたりを覚えきった後に取り組むと良い本ですね。