チャンツで語彙を覚える方式のアルク社『キクタン』シリーズの1冊。語彙がとくに難しいといわれる英検1級試験向けの単語集です。
「聞いて覚える」アプローチが特徴の『キクタン』
『キクタン』シリーズは、主に語彙の増強を目的とした参考書群です。
受験英語から実用英語まで幅広く対応しているシリーズで、「聞いて覚える」をコンセプトに、チャンツと呼ばれるリズミカルな音楽にのせて単語を覚える手法をとっています。学校英語はもちろん、TOEIC・英検などの資格試験用もレベルごとに発行されているほか、医療・科学向け語彙など、学習者のニーズにあわせて幅広く展開されています。
キクタンシリーズの特徴「チャンツ」は、移動中・運転中など、読む作業ができない時でも利用できますので、スキマ時間の活用に適した学習手段です。
チャンツでは英語・日本語・英語のサンドイッチ方式でひとつの単語を読み上げ、その後さらに数語をまとめてリピートします。同じ単語が複数回読まれるスタイルは、記憶の定着にも効果的です。BGMのビートのおかげで、発音のメリハリがわかりやすいのもポイントです。
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一杉 武史『キクタン 英検1級』付属CD(2枚組) |
英検1級合格に必要な1120個の語彙を厳選
英検1級は、英語関連資格としては国内最高峰といわれ、難しい語彙が頻出することでも知られています。そのため、必要な語彙をいかに効率的に身につけるかが合格の鍵となります。
この本で取り上げている単語・熟語の収録数は、2004年からの1級の過去問を分析し絞り込んだという1120個です。ただし1級攻略に必要な語彙をカバーするには、この1冊だけでは不足しますので、ほかの単語集と併用していくのがよいでしょう。
『キクタン 英検1級』では、これら1120個の単語・熟語を「10週間で効率的に身につける」としています。つまり1日あたり16単語(見開きで2ページ分)ずつ学んで、70日で一巡の設定です。チャプター1~9まで、品詞ごとにまとめられていますので、およそ1週間から10日前後は、同じ品詞グループの学習が続きます。なおチャプター8~9は熟語グループです。
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一杉 武史『キクタン 英検1級』 |
本文をきちんと読んで効果的に使う
単語にはそれぞれ、意味・フレーズ・例文が併記され、派生語や類義語もまとめられています。英検1級の語彙は類義語が多いのも特徴ですから、しっかりとチェックしたいところです。
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一杉 武史『キクタン 英検1級』 |
見出し語以外は少し文字が小さめですが、レイアウトはすっきりしていて見やすくなっています。ページ下部のわずかなスペースを利用した「Quick Review」なども、前日分を復習できるようにという工夫です。反復学習を見すえたつくりになっています。
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一杉 武史『キクタン 英検1級』 |
1級の膨大な量の単語を覚えるには、できるだけ多くの手段を駆使して取り組む必要があります。チャンツのビートを味方につけ、しっかりと単語を記憶に刻みつけてください。
ただし注意していただきたいのは、チャンツでは1単語につきひとつの意味しか読み上げられないということです。本文をきちんと読まないと、せっかく掲載されている関連情報が生かせません。チャンツだけを利用するのでなく、本文にも必ず目を通しましょう。
【レビュー】英検1級 でる順パス単:検定試験では最高レベルの難単語を多数収録した英検1級対応の英単語集
【レビュー】英検1級 文で覚える単熟語:長文の中で高度な英単語を覚えていく旺文社の文脈主義教材
まとめ
- ビートにのせて英単語を覚える“チャンツ方式”を利用した「キクタン」シリーズの1冊です。
- 英検1級向けの単熟語1120個を、10週間(70日)でマスターできるよう設定。
- 本文をきちんと読み、単語の情報を頭に入れたうえで、チャンツで定着させましょう。
単語・フレーズ・例文と3段階で英単語を記憶させるなかなか面白い単語帳です。ただ、収録語は1120語と、英検1級合格にはやや物足りない単語数です(同意語・反意語を含めた延べ単語数は数千語ですが、必ずしも英検1級レベルの語彙ではないようです)。旺文社の『英検1級 出る順パス単』『英検1級 文で覚える単熟語』あたりと併用すると、とても効果的に使えるのではないでしょうか。