なぜ英会話が苦手なのか
日本人の多くは、中学・高校で何年もかけて基本的な文法と語彙を学びます。にもかかわらず、会話になるとダメ……という人が多いのはなぜでしょうか。それは、会話の「実践的」スキルが不足しているからだと考えられます。
学校英語は、長いこと「読み書き重視」でした。英語の勉強と言えば、文字を見て意味を理解し、文字で答えを書く、というパターンだったわけです。しかし実際の会話では、言葉を「音」としてとらえ、耳で聞いて理解すること、声に出して伝えることが求められます。では、こうしたスキルを伸ばすために、どのように学んでいったらよいのでしょうか。
英会話を学ぶための基礎づくり
英会話学習に取り組む前に、中学1~2年生レベル(英検4級程度)の語彙と文法事項を、いま一度確認しておきましょう。これは、初級者用教材を使いこなすための、最低限のラインです。
挨拶や決まり文句など、ごく簡単なフレーズの丸暗記だけなら、基礎を学ばずとも何とかなるかもしれません。しかしそれでは、会話を続けることは難しいはずです。
会話の力を伸ばしたいなら、少なくとも中学1~2年生程度の内容は学習しましょう。「中2程度?そのくらいなら、たぶん大丈夫……」と思っている人、ためしに中学生用の問題集をやってみてください。意外と苦戦するかもしれませんよ。一度、復習のつもりでやってみることをおすすめします。とくに中1範囲のbe動詞の文・一般動詞の文のしくみをしっかり理解できるかが、その後の英語力を左右する、と私は感じています。初心者はとくに留意していただきたい部分です。
教材の選び方について
学習をすすめるにあたっては、自分にあった英会話教材を選ばなければなりません。その際大切なのは、教材の「レベル」と「目的」です。レベルを判断する目安は、たとえば会話フレーズ集なら、“見てわかる単語”が7~8割以上あるかどうか、です。つまり文字で読めばだいたいわかる、ということ。知らない単語ばかりだったら、たぶん途中で挫折してしまいます。少し簡単かな、と思えるレベルから始めましょう。
受験英語で読み書き・文法を鍛えた方でも、最初の英会話は中学英語からスタートしましょう。例え難関大学合格者であっても、スピーキング能力はゼロに等しいです。
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次に「目的」について。これは、自分に必要なシーンのものを選ぶということです。海外旅行で使いたいフレーズなのか、ビジネス目的なのか。ビジネスでも、オフィス会話なのか接客なのか、その目的に応じたフレーズ集を探してください。実際に使いたいフレーズなら、学習のモチベーションもアップします。
そして、必ず適切な音声教材がついていること。CDでもウェブからダウンロードでも、自分の学習環境に応じて便利に使えるものを選びます。
実際のトレーニング法
では具体的なトレーニング方法についてです。ご紹介したいのは2つのアプローチ、「音読」と「瞬間英作文」です。まず、音読トレーニングから見ていきましょう。
音読
正しく音読をするためには、まずスクリプトを見ながら、お手本音声をしっかり聞きこんでください。日本人は、いわゆるカタカナ英語にひきずられがちです。たとえば「Good night(おやすみ)」が、「グッドナイト」ではなく、「グナイ」と聞こえることに気づかなければ、正しく発音することはできません。お手本音声を聞き、該当するフレーズとていねいにリンクさせていきましょう。
発音がひと通り頭に入ったら、音読です。お手本を忠実に真似するつもりで、声に出してください。ぼそぼそとではなく、大きく、はっきりと発音しましょう。日本語と違い、英語ではアクセントやイントネーションを強調しないと通じにくくなります。大げさかな?と思うくらいやってかまいません。記憶の定着のためにも、くり返し音読してください。
瞬間英作文
「瞬間英作文」とは、かんたんな日本語文を即座に英語にするというトレーニングです。教材の例文の、日本語文だけ見て実際にやってみましょう。思ったより難しいことに驚くのではないでしょうか。しかしこれをくり返していくと、徐々に英語特有の語順に慣れ、発話が楽になっていきます。
ベレ出版の『瞬間英作文』シリーズや、学研の『絵で見てパッと言う英会話トレーニング』シリーズ、NHKのラジオ講座「英会話タイムトライアル」は、この形式で実践練習できるのでおすすめです。毎日やると確実に力がつきます。スムーズに言葉にできるまで、くり返し練習しましょう。条件反射的に英文が出てくるようになれば、理想的です。
英会話教室に通わずとも、これらの自主トレによって、基礎は十分身につけられるはずです。そして、もし外国の方と出会うチャンスがあったら、間違いを恐れず、ぜひ学んだフレーズを使ってみてください。きっとそれが、さらなる学習意欲につながることでしょう。
上記のように学習書に付属しているCDを「発音矯正」に利用する視点はとても大切です。CDは単に聞き込む「リスニング学習」に使えるだけでなく、ネイティブスピーカーに近い発音になっているかを確認するためにも利用できます。自分の発音を録音して、お手本CDと比較してみましょう。しっかりした発音を身に付けると、なんとリスニング力(特に相手がどう発音しているのか「聞き分ける」能力)もアップしてしまいます!発音矯正の目的は、一つは通じる発音を身に付けること、もう一つはリスニング力アップのためです。