『NHKラジオ 入門ビジネス英語』は、NHKのラジオ番組「入門ビジネス英語」と併用することを目的とした総合教材です。ラジオ番組のテキストのためリスニング教材と思われがちですが、語彙の解説や文法の解説も収録されているため、会話文のリーディング・リスニングを通じて総合力アップが期待できます。
ビジネスシーンを想定した実践的な英文を収録
入門ビジネス英語シリーズではある企業の交渉やプレゼン、ミーティングといったビジネスシーンを想定した会話を収録しており、その会話文に出てくる重要表現や語彙を習得する構成をとっています。
「自信をつけるビジネス英語」をテーマとしており、特にそれぞれの会話文のまとまり毎に紹介される”Business Phrase on the Day”のコーナーは秀逸です。会話文本文に出てきた英文例のみならず、より丁寧な表現、より砕けた表現といった類似の言い方も収録しています。
会話文本文がビジネスシーンを想定した英文で作られているため、出てくるフレーズはそのまま実際のビジネス現場で使えるものになっています。さらに類似の言い方を併せて学習することで実践的な表現力や会話の構成力・臨機応変な対応の大きなアップが期待できます。
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柴田 真一『NHKラジオ 入門ビジネス英語』 |
会話文本文の基本構成は左ページに英文、右ページに和訳と対照しやすい構成になっており、本文のページ下部にはその文章で出てくる重要語彙の解説が含まれています。
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柴田 真一『NHKラジオ 入門ビジネス英語』 |
英語学習のペースメーカーに最適
『NHKラジオ 入門ビジネス英語』の利点はテキストの構成が分かりやすく、詳細な知識まで学習できるだけにとどまりません。英語学習のペースメーカーとしての利用もお勧めです。
ある分厚い学習書を購入したけれど結局最後のページまで読まずに放り出してしまった、それも何冊も、という経験はないでしょうか。英語の学習では学習内容が充実していることはもちろんですが、「学んだことを実際の現場において自信をもって使うことができる」ようにすることが重要です。
本書は一か月分の分量(テキスト一冊に該当します)が確認問題や練習問題の解答、語彙解説を含めても100ページ強程度とあまり分厚くありません。また月刊であるため毎月同じ程度の分量の学習材料を得ることができます。
しかも前段で紹介したように単なるリスニングにとどまらず、語彙・英語表現・文法知識の解説まで含んでいます。そのため、特に英語学習のペースがつかめず悩んでおられる方は、まずこのシリーズを毎月マスターする、という目標を立てて利用することをお勧めします。
何であれ「一冊の学習書・一シリーズの学習講座を全てやり抜いた」ということは大きな自信になります。自信がつけば実際に英語を使う場面でも堂々とふるまうことができるでしょう。
ビジネス英語は敷居が高くそのレベルに達していないと考えておられる方は、ラジオ英会話や基礎英語といったシリーズもありますから、そちらも検討してみましょう。
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入門ビジネス英語に関しては毎年4月~9月の6か月間が一つの講座のカリキュラムになっており、10月~3月は年度前半の再放送となっています。また、「NHKゴガク」のウェブサイトで利用登録をすればストリーミングで放送された分が聴けますから、いつから始めても問題ありません。
TOEICスコア800以上を目指す方向けの教材
「自信をつけるビジネス英語」をテーマとしているだけに、ビジネス英語の試験であるTOEICとの相性は良いと言えます。
TOEICスコアで言えば最適な対象者は500~700ほどのレンジの方で、850以上のスコアを目指す方と考えます。もちろん今はそれ以下のレンジの方が頑張ってスコアを上げるためにTOEIC対策として利用するのであれば、現在のスコアに関係なく利用する価値はあります。
入門ビジネス英語のレベルより高いNHKのラジオ学習番組としては「攻略!英語リスニング(2017年3月終了)」と「実践ビジネス英語」がありますが、前者は長文リスニングを目的としており単にスコアを上げるためのTOEIC対策としてはやや無駄があるかなという印象です。
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後者は最新トピックを扱っていることもあって英文や語彙レベルは高く、言い回しもやや複雑ですから、少なくともTOEICスコアが800以上の上級者クラス以上の方が利用すべきであると考えます。
【レビュー】実践ビジネス英語 ニューヨークシリーズ ベストセレクション:CEFRレベルでは「C1」に位置付けられているNHKの上級者向け英会話教材
入門ビジネス英語のカリキュラムに乗って、半年の間コンスタントにテキストを一冊ずつマスターしていけば、TOEICスコアのかなりのアップが期待できるでしょう。
まとめ
- NHKラジオ番組「入門ビジネス英語」のテキストである総合教材。
- 「Business Phrase on the Day」のコーナーは類似表現を収録しており、対応力の幅が広がる。
- NHKゴガクのウェブサイトを利用すればラジオ番組のスケジュールに従わなくても学習可能。
- 上級者を目指す人の英語学習ペースメーカーとして最適。
CEFRでB1レベルとは言ってもリスニングや語彙レベルの話であって、このテキストのような英語を流暢に「話せる」ひとは、TOEIC(LR)で900を突破している方でもかなり少ないでしょう。結局のところTOEIC(LR)はスピーキング力については正確に測ることはできません。企業に求められているからといってTOEIC(LR)のスコアを追い求めるのではなく、4技能(読む、聴く、書く、話す)をしっかりとトレーニングする習慣を付けていきましょう。