やり直し英語を志すなら
学生時代「英語の勉強なんて嫌い、面倒くさい」と思っていませんでしたか?しかし大人になると、旅行や仕事がらみで英語を使う機会も増えます。「これではダメだ、英語をやり直そう!」と決意する人も、少なからずいるようです。
そんなときまず頭に浮かぶのは、英会話スクール通いかもしれません。ただ実際のところ、“週に1回スクールに通っただけでペラペラに!”というのは幻想です。やはり毎日の地道な自主トレなくして、上達は見込めません。誰かに教えてもらえば何とかなる、ではなく、「主体的に学ぶ」という意識を持ちましょう。
英語は実技科目だと考えよう
なかでも、かつて受験英語を暗記でのりきってきた人から「読み書きはまだいいが、とにかく会話が苦手で…」という声をよく耳にします。
英語と日本語では、語順など文のつくりが根本的に違います。ですから自分の言いたいことを、英語独特のやり方で組み立て直さねばなりません。実際の会話では、それを反射的に行うわけですから、難しいのは当然ですね。
英語は「暗記科目」ではなく、むしろ体育や音楽、家庭科のような「実技科目」だと考えましょう。身体を使ったトレーニングなしに、スキルを上げることは難しいです。会話で反射的に言葉が出るようにするには、音声を聞き、声に出して練習し、会話のロールプレイなどで場数を踏むしかないのです。たとえ大学入試レベルの長文が読めても、会話のスキルは別物だとお考えください。
中学英語は基本中の基本
とはいえ、受験英語が全くムダだったかというと、そうとは限りません。英語学習には、基本的な文法や動詞の変化形など、どうしても丸暗記しなければならないものもあります。そういったことをきっちり学校でやってきた人は、ある意味“貯金”があるわけですね。やり直し英語には、これは大きなアドバンテージとなります。
「基礎力の貯金」がもし不足している場合、私のおすすめは、中学生向けの参考書やワークブックです。最低限の英文法と単語のおさらいをしておくことが、その後、もっと上の教材を使う際の下地になります。それも、中1~中2レベルを必ずやってください。中3レベルの関係代名詞や受動態は、中1~中2の基礎がなければ理解できないからです。『中学英語をもう一度ひとつひとつわかりやすく』(学研教育出版)や『スーパーステップ・くもんの中学英文法』(くもん出版)などがおすすめです。
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実践的トレーニングには音声学習が必須
並行して、リスニングと音読の練習もスタートします。音声教材付きのテキストを選び、本文を確認しながら、ていねいに聞きこんでいきましょう。発音が頭に入ったら、マネするつもりで音読します。音読はとても効果的なトレーニングですから、毎日の日課にするとよいですね。NHKの語学講座を利用するのも一案です。
中学英語レベルと言えば簡単そうに聞こえますが、ここをおろそかにしないことが肝心。いきなり英字新聞や洋画などを…と意気込む人もいますが、これは相当レベルが高いので注意が必要です。難しすぎるものは、消化不良を起こし、挫折しがちです。目安としては、辞書を引かなくてもまあ読める、くらいのテキストがちょうどよいでしょう。やさしいものをたくさん、こなしてください。
英語の「壁」を突破する
これらのトレーニングを毎日地道に続けてしばらくすると、「あ、聞きとれる!」とか、「あ、スッと英語のフレーズが浮かぶ!」という瞬間が、ある日突然訪れます。これは「壁の突破」や「大きな進歩」を意味する、「ブレイクスルー」と呼ばれる現象です。貯めてきたインプットが、あふれて外にこぼれる感じと言ったらよいでしょうか。自分の英語力の伸びを実感できると、学習がより一層楽しくなってきます。少しずつ教材のレベルを上げ、新しい課題に挑戦し、それを乗り越えてください。勉強し続ける限り、こうしたブレイクスルーは何度でも経験できるのです。
最初のブレイクスルーは、人によって数カ月、ひょっとすると数年かかるという場合もあるかもしれません。しかし、学習をコツコツ続けてさえいれば、必ずいつかは訪れるものです。ぜひその瞬間を味わっていただきたいと思います。それが実感できたなら、あなたの「やり直し学習」は大成功、といえるのではないでしょうか。
英語講師や上級学習者の方々が言う「ブレークスルー」現象ですが、これは確実にあります。意図的にこの現象を引き起こすことはできませんが、上記記事のように地道に学習していればある日突然やってきます。これはインチキ教材業者が言っているような「1日5分聞いているだけで、ある日突然ペラペラになる!」という意味ではなく(笑)、「これまで緩やかに上達していたものが、ある日急角度で一段階レベルアップしていることが実感できる」という意味です。私も何度か経験したことがあります(特にリスニングにおいて)。なかなか上達しないなあ、と思っている初心者の方でもあきらめずに学習を続けてください。