英字新聞『ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)』の記事を通して、経済・ビジネス英語を身に付けるための学習書です。
世界で通用する英語能力とは何かがわかる
著者は長年の商社での勤務経験から、国際ビジネスの実務で通用する英語とはどういったものなのかを熟知しており、英語を正確に読み書きする能力がとりわけ重要だと述べています。
これは私には少々意外でした。ビジネスで成功するためには対面でのコミュニケーション力が何よりも優先順位が高いと考えていたからです。それは言い換えれば、高い英会話力を身に付けている必要があるということになります。
しかし「ネイティブスピーカーと対等に渡り合うのは容易ではなく、難しい交渉のときには特にメールやレターといった手段で交渉することにより言葉のハンディキャップを埋め合わせることができ、それで今まで乗り切ってきた」という体験談にはとても納得しました。
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小西 和久『経済ニュース英語リーディング教本』 |
これから国際ビジネスの舞台で活躍したいと考えている学生や社会人の方は、著者の体験談を念頭にリーディング、ライティング能力向上を中心とする英語学習に励めば、理想とするビジネスパーソンに近づけると言えるでしょう。
What’s Newsでウォーミングアップ
What’s News は WSJ の一面に掲載されてるコラムで、主要記事の内容を20-50語程度に要約したものです。
著者は執筆にあたり、ニュース英語にあまり触れたことない読者も想定しました。そのため、そのような読者にニュース英語に親しんでもらいたいとの配慮から、詳細な記事の読解に入る前に50個のコラムを用意しています。
コラムのトピックは、トヨタ自動車、グーグル、アマゾン、アップルやダウ平均といった、誰もが一度は聞いたことがあるようなグローバル企業や経済指標などで構成されており、単語数の少なさも相まって手軽に取り掛かることができるものと言えるでしょう。
また、内容を理解できたかの確認も踏まえ、Q&A、語注、和訳、解説が掲載されています。Qは3択形式となっており、ゲーム感覚でさくさくと進めることができます。
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小西 和久『経済ニュース英語リーディング教本』 |
解説はニュース英語独特の書き方や文法の説明など、記事を読むに当たって重要な知識となる説明が何行にも渡って行なわれており、非常に詳しい印象です。
英語の基礎力に自信がある人以外は、しっかりと What’s News で力をつけてから記事を読むようにすれば、途中で読むのを諦めるということにはならないでしょう。
段階的な難易度の記事で経済ニュース英語を習得
掲載されているWSJの記事は、BEGINNING・BASIC・INTERMEDIATE・ADVANCEDの4レベルに応じて書き換えられています。BEGINNING が10題、BASIC が20題、INTERMEDIATE が2題、ADVANCED が1題です。
BEGINNING と BASIC で大部分を占めており、語注にある単語レベルから推測するとTOEICスコア400-600の初中級者が主な対象となっているでしょう。学習者が記事内容を理解できるように工夫しているのも特徴です。
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小西 和久『経済ニュース英語リーディング教本』 |
記事を読む前に、見出しと記事の1行目と注意して読むべきポイントを英語と日本語で示しているのに加え、注意すべき単語・表現の確認ができます。また、記事本文には上述の注意すべき単語・表現が青字で表記され、すぐに見てわかるようになっています。
What’s News と同様 Q&A、語注、和訳、文法・表現についての解説は掲載されていますが、Qでは4択になったのに加え、問題数が5題に増えました。単語の言い換えを選ぶ問題、記事内容が理解できているかを試す問題は、TOEICパート7で出題される問題さながらと言えるのではないでしょうか。
まとめ
- 国際ビジネスの舞台で活躍するには、読解やライティングの能力を高める必要がある。
- What’s News で WSJ のレベル別記事を読むための基礎力が獲得できる。
- レベル別記事を段階的に読んでいくことで経済ニュース英語を習得できる。