ビッグデータから割り出した、最も使用頻度の高い単語を順番に解説していく単語帳です。ADVANCEDと付いているとおり、その前編となるCOREもあります。
急がば回れの単語帳
最大の特徴は、ビッグデータに基づく使用頻度の高い順番に単語を掲載しているという点です。そのため、アルファベット順になっているわけでもなく、品詞ごとに分けられているわけでもありません。単語の分野がまとめられているわけでもなく、純粋に使用頻度が高い順番となっています。
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シン・ヨンジュン『BIGVOCA ADVANCED 単語を覚える最も完璧な方法』 |
そのため、すでにある程度英単語を学んでいる人が見ると、「あれ? この単語がこんなレベルのところにあるのか」と感じることや、「この辺りは知っている単語ばかりだが、ぽつりぽつりと知らない単語があるな」と感じるようなこともあるかもしれません。その意味で、「すでにある程度高めた単語力をさらに高める」目的で用いるのは非効率的です。
最も効率的に用いるには、COREから初めてADVANCEへ、といったように、頭から順番に学習していくのが良いと言えそうです。そうすることで結果として、使用頻度の高い単語を効率よく習得していくことができ、試験勉強などにも役立てることができるでしょう。
これまでに「学び落とした」単語を学ぶ
試験勉強や受験勉強などを通じて英語を学ぶと、ネイティブが頻繁に使う単語を学び落としたり、日常的によく使われる単語が高難易度の単語として出てきたりすることがあります。
『BIGVOCA ADVANCED 単語を覚える最も完璧な方法』を最初から取り組むことにより、その「学び落とし」を拾うことができるでしょう。これを通じて、「そう言えばあれは英語で何て言うんだ」と疑問に思うことが減るかもしれません。
短期間で試験の点数を上げられるかどうかは「?」
前述のように、「急がば回れ」の単語帳です。
そのため、特別に試験勉強や受験勉強のために編集されているわけでもなく、「試験勉強では頻出の単語」が高難易度の単語として収録されていたり、あるいは試験が求める内容によっては収録されていなかったりする面もあると考えられます。この理由から、「試験で効率よく点数を取りたい」というモチベーションで用いるのはオススメできません。
しかし一方で、広範に対応できるような単語力が付くとも言えます。本シリーズのCOREとADVANCEDを合わせて覚えることができれば、高度に専門的な単語を除いておおよその文章を理解することができるようになるはずです。
類義語や対義語などの解説はなし
単語の解説は簡単な日本語訳程度で、派生語や反対語などの解説はありません。単語の意味やニュアンスに特に詳しいというわけでもないので、必要に応じて自分で辞書を引き直したりするとより深く学習できるのではないでしょうか。
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シン・ヨンジュン『BIGVOCA ADVANCED 単語を覚える最も完璧な方法』 |
ちなみに格言や明言が各ページに1つずつ収録されていますが、これは掲載されている単語が用いられているフレーズということではありません。
まとめ
- 広範の文章を読むことができる対応力のある単語力が付く。
- 何か目的があって短期的に点数を上げたいといった場合には向かない可能性がある。
- もう一度英語をやり直したい人など、「単語を覚えなおしたい」という人には最適。
レビュー本文とは異なりますが、私個人としてはこの単語帳は「新規」で単語を覚えるためには非効率だと感じています。英単語のリストと日本語の意味が羅列してあるだけの例文も音声も何もない単語帳なので、新規学習用としては決して作りがよいとは言えません(新規だったらDUO 3.0や速読速聴シリーズなど、複数の単語をまとめて覚えたり長文の中で覚えるタイプの単語帳を使った方が早いです)。しかし、ビッグデータを分析して試験英語ではなく「現代英語」全体の必修語8000語を抽出するというアイデアは秀逸ですね。このAdvancedは、すでに英検1級水準かそれ以上の単語までよく知っている層が、抜け漏れをチェックするためには非常に有効な本だと思いました。あるいは英検1級やTOEIC900以上を狙う層向けの上級単語帳との「併用」がお勧めですね。