ネイティブが使うようなイディオムを解説している表現集です。色々なテーマで分けられたイディオムがおよそ300種類掲載されています。もともとは英語のネイティブが著者であり、本書はそれを日本語訳したものとなっています。
英語を読んだり聞いたりする上でのイディオム
イディオムは決まり切った表現であるため、濫用すれば逆に陳腐であるように感じられることもあります。
そのため、ここで解説されているフレーズをそのまま用いるのが常に良いわけではありませんし、中には古くさいと言われるような表現もあります(これについては著者も前書きで同じように述べています)。
しかし、実際に英語を見たり聞いたりしていると、そういう意味なのだと知らなければ苦労するようなイディオムが用いられていたり、よく知られているイディオムを改編して用いた新たな表現が用いられていたりするものです。
『語源でなっとく 最頻出イディオム 映画・文学・YouTubeに出てくる表現編』は、そうした場面に対応できるようになるための本であると言えます。
慣用語句を語源から理解することができる
どうしてそのイディオムが現代のような意味になったのかについて説明しているため、トリビア本としても面白く読むことができます。
加えて、語源という知識と結びつけることで表現自体を覚えやすいということもありますし、自分で新たな表現を生み出す際にどのように改編すると良いかということも分かってくるでしょう。
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マーヴィン・ターバン『語源でなっとく 最頻出イディオム 映画・文学・YouTubeに出てくる表現編』 |
見た目として分かりにくい点がネック
見た目の問題として、それぞれのイディオムは大文字を交えて紹介されています。そのため、「本来何処を大文字にするイディオムなのか」といったことや、「このイディオムはどの品詞で用いるのか」といったことが分かりにくくなっている場合があります。
また、例えば eat one's heart out(非常に驚く)といった表現がありますが、こうしたイディオムの中の one's の部分が全て your になっているのも、人によっては分かりにくいと感じるかもしれません。
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マーヴィン・ターバン『語源でなっとく 最頻出イディオム 映画・文学・YouTubeに出てくる表現編』 |
それでも例文が用意されているため、実際にどのように用いられる表現なのかを理解することはできます。ただ、この例文が常に良文というわけでもなく、この例文を理解するための文法は解説されていません。
総じて言えば、すでにある程度の知識がある人がイディオムの知識(あるいはそれにまつわる知識)を広げるのに読むと良い本と言えそうです。
まとめ
- 様々なイディオムが語源付きでおよそ300種類収録されている。
- 古くさい表現も含まれているが、知らなければ意味が分からないイディオムも多く、ボキャブラリーの補完に有効。
- 自分で文章を書く際に、新たな表現を生み出すきっかけにもなる。
近年はやっている言葉「バケツリスト」(映画で有名になった?)は、日本語で言えば「死ぬまでにやりたいことリスト」ですが、これは慣用句「Kick the bucket(死ぬ)」から派生した言葉です。なぜ「バケツが死と関係があるのか?」というと、昔イギリスで絞首刑を執行するときに、囚人をバケツの上に立たせて首に縄をかけ、バケツを蹴ったことに由来しているからだそうです。このように語源を知ると、慣用句は覚えやすくなるのではないでしょうか?検定試験を意識した勉強ばかりしていると、このような試験には出ない慣用句を勉強することを疎かにしがちなのですが、映画や文学などの難しい英語を理解するには必須の知識です。試験対策ではなく、純粋にネイティブスピーカーの英語を理解したい&身に付けたい層には特にお勧めしたいですね。私も最近読んでいます。