英語学習における発音の重要性を説いた『英語耳』の続編、『単語耳』シリーズの1冊。発音学習の効果を、単語力の強化にも生かそうという学習書です。
『英語耳』と『単語耳』シリーズ
著者・松澤喜好氏は、英語学習における発音の重要性を説き、リスニング力をアップさせる参考書『英語耳』を2004年に刊行。発売3年で30万部を超えるベストセラーとなりました。
続編である『単語耳』シリーズは、その手法を生かしてリスニング力のみならず単語力をも強化するのが狙いです。
本シリーズは現在、JACET8000(大学英語教育学会基本語リスト8000語)というリストに基づき、4つのレベルに分けられ、計4冊が刊行されています。『単語耳 理論編+実践編 Lv.1』では、そのうち最も基本的な中1~高1レベルの1000単語を扱っています。
理論編と実践編という構成
まず「理論編」では、学習のさまざまなノウハウや考え方が紹介されます。その後、「実践編Lv.1」として、付録CDを活用した発音練習を進めることになります。
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松澤 喜好『単語耳 理論編+実践編 Lv.1』付属CD(2枚組) |
理論編では、目標とすべきレベルや、発音学習を極めるとどういうメリットがあるかについて詳細に記述。大きく「発音・語彙・多読」の3つのポイントに分けて、学習法を具体的に細かく説明しています。
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松澤 喜好『単語耳 理論編+実践編 Lv.1』 |
実践編では、辞書でおなじみの発音記号を基に、非常にていねいに発音のコツを述べています。既刊『英語耳』と重複している部分も多いですが、さらに細かい内容です。
日本語の発音との違い、あるいは英語の発音のなかでも似ている音との差が、微に入り細に入り説明されています。しかし文面での記述には限界があるため、付属CDで発音を確認しながら学習を進める必要があるでしょう。
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松澤 喜好『単語耳 理論編+実践編 Lv.1』 |
発音を学ぶメリットとは?
リスニングやスピーキングのスキルを上げるために、発音を学ぶことは必須です。
従来の学校英語ではあまり重視されてこなかった発音分野ですが、そのぶん、きちんと学べば思わぬ「伸びしろ」が隠されている可能性があります。独学の難しい分野であることは確かですが、トライしてみる価値はあるはずです。
英単語や発音記号がびっしりのページを見ると、敬遠したくなる学習者もいるかもしれません。ですが、発音記号はいったん覚えてしまえば意外に重宝します。たとえば英単語にカタカナでふりがなをつけることは、初心者のうちは仕方のないことですが、正しい発音を身につけるにはマイナスです。
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松澤 喜好『単語耳 理論編+実践編 Lv.1』 |
発音記号でふりがながつけられれば、そうした心配はありません。発音がじょうずになりたい、上級者をめざしたいと思うなら、こうした参考書で一度きっちり勉強しておくのもおすすめです。
ちなみに、「はじめに」によれば、この本の対象レベルは中学1年生から英検1級受験者まで…と幅広く想定しているようですが、全くの初心者には少々難しそうです。
すでにさまざまな単語に出会ってきた中級者くらいからのほうが理解しやすいですし、理論編の面白さも感じられるでしょう。どちらかといえば『英語耳』のほうが、とっつきやすい印象です。
発音もくり返しトレーニングすることが大切
著者は、ひたすら発音トレーニングをくり返すことを推奨しています。たとえば歌や簡単な会話を少なくとも300回はくり返すこと、とか、付属CDを使って単語の音読100回、などと記述されています。その通り行うのは簡単ではありませんが、だからこそ、実際にやってみると結果につながるのです。
くり返し練習することは、語学学習では王道中の王道です。自分なりのやり方で、何度も声に出して練習をしてみるとよいでしょう。身体で覚えるまでやれば、本書のキャッチコピーどおり「一生忘れない」単語力を身につけられるはずです。
まとめ
- 発音学習を通じて英語力・単語力をアップさせることをねらった参考書です。
- 子音や母音の発音について、発音記号ごとに細かくていねいな説明がなされています。
- くり返し練習し、身体で発音を覚えることで、いっそう強く単語の定着が見込めます。
特に注目したいのは、発音指導のエキスパートである著者・松澤喜好氏による発音学習と英語学習全体にわたる「理論編(全体の1/3ほど)」です。特に初学者はここをじっくりと読んで、英語学習の真実を知ってほしいと思います。他の学習書を使って勉強するときにも役に立つ知識が満載です。