口語的表現やビジネス的表現が重視される昨今、あえて文学的表現を教材として編集することで多角的な学習を可能としている本です。
実用性が高いとされるような英語表現では学びにくい、「英語のジョーク」や「言語間の音やリズムの置き換え」「小説を読み解く上での考え方」などを身に付けるのに適しています。
言葉遊びやジョーク、自伝や小説、戯曲など様々な単元がある
いわゆるプラクティカル(実用的)な英語では、通じやすいこと、分かりやすいことが重要視される傾向にある一方、言葉遊びやジョークなどはセンスや教養などが必要であるなどして分かりにくい場合もあるため、昨今の英語教育ではあまり触れられる機会が多くありません。
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斉藤 兆史『English through Literature 文学で学ぶ英語リーディング』 |
しかし『文学で学ぶ英語リーディング』では敢えてそうした面白さを理解するために解剖することを試みる場合もあります。こうしたことを通じて、英語独特のユーモア表現がどのように生まれているのかを理解するきっかけを掴めます。
そのほか、日本の文学や俳句を英訳するとどうなるのか、日本語的な表現はどのように英語的表現に置き換わるのかを学べるセクションもあり、翻訳を勉強したい人にも学べるところがあるでしょう。
より”含みのある”会話のために
文学やジョーク、英詩、言葉遊びなどを知っていることは、通常の会話でももちろん役に立ちます。実用性に偏った英語表現ばかりを覚えていると、”ドライ”な会話に辟易してくることもあるでしょう。ユーモアやエスプリはコミュニケーションの潤滑油であるとも言われます。
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斉藤 兆史『English through Literature 文学で学ぶ英語リーディング』 |
もちろんこれは、「チョーサーはこんな風に言っている……」のような知識をひけらかすような言い回しをせよ、ということではありません。例えば日本語で「伝わるかどうか微妙なラインの冗談」を言うのが楽しいように、英語でもそうした冗談を即興で言ったり、相手が言ったのを理解したりできるようになるための本なのです。
内容は難しくないが、それなりの英語力は必要
本書で出てくる英語自体はさほど難しくありませんし、特にレベルの高い表現については注釈もついています。しかし、対象者が大学1年生〜2年生レベルとされていることからも、ある程度の英語力があることを前提として書かれていることは間違いありません。
「英語は決して苦手ではないが、小説や詩になると読めない」という人や、「もっと英語で冗談を言えるようになりたい」という人が読むと、何か得るところがあるかもしれません。逆に言えば、定型文を覚えることでコミュニケーションに活かしたいという人や、すぐに使える便利なフレーズを知りたいという人には向かないとも言えるでしょう。
まとめ
- 文学やジョークなど、様々な英文を読むことができる。
- 言葉遊びやジョークの面白さ、詩の楽しみ方、日本語の表現を英語に置き換える場合の訳し方などが豊富。
- よりユーモアの効いた英会話がしたい人、自分でそんな文章を書いてみたい人におすすめ。