主に語学参考書を出版しているJリサーチ出版の「J新書」シリーズの1冊です。さまざまなイディオム(熟語)を学び、理解や表現の幅を広げるのに役立ちます。
そもそも、イディオムとは何か?
イディオムとは、複数の単語が結びつき、独立したまとまりとなってある特定の表現をするもので、熟語や慣用句とも呼ばれます。中学・高校で英語を学んだ時、熟語の暗記で苦労した方も多いのではないでしょうか?
たとえば「give」は「与える」、「up」は「上へ」の意味と習いますが、「give up」なら「あきらめる」という意味になりますね。イディオムを知らなければ、「ひとつひとつの単語は簡単なのに、セットになったときの意味がわからない…」ということが起きてきます。ですから、英語学習において数多くのイディオムを知っておくということはとても大切になってくるわけです。
さまざまなイディオムを詳しく解説
『魔法のイディオム』は、大きく二部構成になっています。第一部は「シーンで覚える重要表現」、第二部は「テーマで覚える重要表現」というくくりでまとめられています。
第一部「シーンで覚える重要表現」では、「あいさつ」「移動・交通」「会議」などのシーン別に使われそうな表現をまとめています。第二部は「数」「色」などテーマに沿った語句を使ったイディオムが紹介されています。
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石井 隆之『魔法のイディオム』 |
各ページにイディオム2つを掲載、イディオムとその意味のほか、「なぜ?がわかるポイント」として、イディオムの成り立ちや文化的な背景などが解説されています。実際の会話文での使用例に加え、類似表現や文法的なヒントについての「ワンポイントアドバイス」も掲載されており、見出し語以外の表現を覚えたりするのに役立ちます。
著者によれば、この本が目指しているのは「オタワの法則」、つまり「おもしろく、ためになり、わかりやすい」ということ。その言葉どおり、楽しみながら知識を深められる熟語集になっています。
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石井 隆之『魔法のイディオム』 |
扱っている単語はやさしいが、レベルは中上級者向け
この本のキャッチフレーズは「中学単語で英会話力UP!」です。「初心者向け?」と思ってしまいそうなキャッチフレーズですが、むしろ中・上級者(TOEIC800または英検準1級以上)におすすめです。
たしかに、使われている単語は主に中学校レベルのものなのですが、イディオムとしては高度なものがずらり。相当な量の英文を読んできた人でも、知らない表現がかなりあるのではないでしょうか。学校で習うようなイディオムではなく、小説や映画のセリフなどでよく使われそうな、こなれた表現が多い印象です。そのため、中上級者からのほうがこの本の良さを生かせることでしょう。
イディオム学習は奥が深い
こうしたイディオムというのは、基本的なやさしい単語を使っていることが多く、それが盲点になりがちです。難しい単語なら辞書を引くでしょうが、やさしい単語だとその必要性を感じにくいからです。
「ははぁ、たぶんこれはイディオムだな」とピンとくれば辞書で探すこともできますが、そういうカンが働くのはある程度学習がすすんだ段階の人でしょう。そこまで到達するには、やはり学習量がものを言います。普段からどれだけたくさん英語に接しているか、ということになるわけですね。やみくもに暗記しようと思っても、量が膨大なので簡単にはいきません。
ですが、この本のように熟語の起源を理解したり、関連表現も一緒に学んだりすれば印象に残りやすく、自然と理解が深まります。英語圏の言葉や考え方についてのトリビア的な面白さもありますので、「こんなふうに表現するのか」と、ぜひ楽しみながら読んでみてください。
まとめ
- シーン別、テーマ別にさまざまなイディオムが紹介されています。
- ひとつひとつのイディオムに、わかりやすく詳しい解説つき。
- 中・上級(TOEIC800または英検準1級以上)の学習者におすすめ。
中学英語とはいっても、単語が中学英語レベルというだけで、TOEIC860以上の学習者でも知らない可能性が高いハイレベルな熟語を収録しています。大学受験生向きの基礎熟語が中心のZ会『速読英熟語』やICP『DUO 3.0』などでは収録されていない難熟語ばかりですね。語源が載っていてなおかつCDもついて、価格は驚きの1200円(税別)という、お得感が強い熟語集です…!