英語をマスターしたいですか?
外出先で時間があると、私はよく書店で語学書のコーナーに足を運びます。そこには「英語学習は○○だけでOK」とか「ラクして英会話をマスター」などの魅力的なキャッチコピーつきの本が、ずらりと並んでいます。英語を勉強しないとなぁ…と思っている人にとっては、つい手に取りたくなることでしょう。こうしたコピーは、書店だけでなく、ネット広告でも目にしますね。
しかし、そんなに簡単に英語力をアップさせることなどできるのでしょうか。しかも、「マスター」することなど…。まずは「マスターする」とはどの程度のレベルを指すか、を定義しないといけませんね。
「英語をマスター」その具体的なイメージとは?
「英語をマスターする」というのは、厳密に言えば「読む・聞く・話す・書く」というアクションのすべてにおいて、母語(日本語)と同じように英語を使えるということでしょう。
しかし一般の学習者が思い描くのは、そこまでハイレベルとは限りません。およそ自分の生活のなかで、英語話者と必要十分なコミュニケーションがとれるレベルと考えるのが自然です。ビジネスパーソンなら、取引先ときちんとした挨拶やスモールトークができ、商談に必要なやり取りができる。観光ガイドのボランティアなどなら、観光スポットや文化、歴史などについて説明ができ、おもてなしの心や気配りのある会話ができる。「マスターする」とは、そうしたことがほぼスムーズにできる状態、と仮定して話を進めます。
もしまったくのビギナーからこのレベルを目指すとすれば、それはたやすいことではありません。大人になってから英語を「第二言語」として学ぶなら、やはり地道な努力なしには難しいです。効率的に学習を進めるために、文法を学ぶことも必要ですし、相当量の文章を読み、音声を聞き、というトレーニングが必須です。もちろん、実際の会話の場数を踏むことも重要ですね。
仮にTOEICや英検などの検定試験でよいスコアを取っていたとしても、実践力となればまた別の話です。実際のコミュニケーションにおいては、誰もが試験音声のようにクリアに話してくれるわけではありませんし、会話の状況もさまざまです。上級者であっても「この言いまわしでよかっただろうか?」「この単語はどう訳せば?」と迷うことなど日常茶飯事でしょう。すでにプロフェッショナルと言われる人でも、学びの過程でこうした歯がゆい思いをたくさん経験しながら、スキルを上げてきたはずです。
楽にマスターする方法はあるのか?
ですから、よくある「ラクしてマスター」系の本や教材も、本当に楽ができるか、といえば現実的には難しいと言わざるを得ません。ただ、もし楽に学習できるとしたら、それはあなたが「英語学習が好き、楽しい!」と思っている場合でしょう。
いやいやながらとか、ノルマだとか、しんどい思いで勉強するなら、英語学習はつらいです。しかし、英語学習に興味を持っていて、文法項目ひとつとっても「へえ、そうなのか! 面白いな!」と思いながら学ぶなら、きっと続けることが苦にならないはずです。
最も重要なことは、「どんな方法・教材であっても、継続なしには効果は出ない」ということです。楽しみながら、ずっと学び続けることができるのであれば、それが唯一「ラクしてマスター」できる道に違いありません。そういう学びをサポートしてくれる存在(よい教師、教材、参考書など)に出会えたなら、それはあなたの英語学習にとって何より強い味方となることでしょう。
私自身、知的好奇心を刺激してくれる教師や、わかりやすい参考書に出会えたこと、そしてともに学習する仲間に恵まれたことなどが、英語学習の道を支えてくれました。そうした出会いを見つけるには、まずは始めてみること、そしてたくさんの学習手段を試すこと、です。ちょっと手をつけただけで「やっぱりダメ」とすぐあきらめるのはもったいない。運命的な出会いは、すぐそこにあるのかもしれません。