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英語講師・Kanaの『ネイティブスピーカーの読み物を読解するにはどのくらいの語彙力が必要なのか?』

洋書を楽しめる語彙力とは

「洋書や英字新聞が読めたらかっこいい」「好きな映画の原作を英語で読めるようになりたい。ハリー・ポッターくらいなら、児童文学だから大丈夫かな?」…英語を学ぶ人から時々聞く言葉です。

ところが、実際に英字新聞やハリー・ポッターシリーズの原書に挑戦したところ、あまりの難しさに歯が立たなかったという声もよく耳にします。こうした読み物が楽しめるようになるには、どのくらいの語彙数が必要なのか、調べてみました。

「Test your vocab」というウェブサイトで、20万人以上の英語ネイティブスピーカーの語彙数を調査したところ、成人では2万~3万2千語程度という結果が出たそうです。
http://testyourvocab.com/blog/2011-07-25-New-results-for-native-speakers.php#mainchartNative

ちなみに、英検1級で合格に必要な語彙数とされるのが、1万~1万5千語。これは、さきほどのサイトによれば、英語ネイティブスピーカーの小学生レベル(10歳前後)の語彙数ということになります。つまり、英検1級レベルの語彙数でようやく「ハリー・ポッター」を楽しめるくらい(!)だということ。それ以下の力だと、せっせと辞書を引く必要があり、読んで楽しむというよりは「解読」する感じになってしまいます。初・中級者が読むには荷が重すぎる、というのも納得ですね。ほかのハリウッド映画の原作なども同様でしょう。

国内で発行されている英字新聞はどうか?

では英字新聞(The Japan Times、The Japan Newsなどの国内一般紙)はどうでしょうか。私の経験上、英検準1級くらいの力(TOEICなら700以上、語彙数にして8千~9千くらい)があれば読めるだろう、というのが実感です。

新聞記事は、文章が簡潔で読みやすくできています。時々難しい単語はあるものの、それをスル―したり、内容を推測したりしながら読むことができるのが、準1級くらいでしょう。1級なら、ほぼ辞書を引かずにいけるはずです。

英字新聞だからといって、お堅いイメージの難しい記事ばかりというわけではありません。海外セレブの近況や、人気の新製品情報など、面白い記事もいろいろ載っています。そうした記事なら英検2級くらいの力でも読むことができます。わかるところから拾い読みすることで、語彙を増やすことができるのではないでしょうか。

よく知っているもの、楽しいもの、から始める

英文に限りませんが、何か文章を読むときには、その内容について背景知識があるかないかで、理解の度合いは変わります。英語はあんまり得意じゃないけど、自分の趣味や仕事に関わる英文ならなんとなく読める、といった経験はありませんか?スポーツ好きならスポーツの記事、料理好きならレシピなどからトライすれば、ハードルが低くなります。

私の経験からいっても、小説など文学系は難しいことが多く、実用書系(ビジネスやハウツー本)のもののほうが読みやすかったですね。前述の「ハリー・ポッター」シリーズも、日本語版を何度も読んだとか、映画を何度も見たという人なら、比較的わかりやすいかもしれません。ですから、まずは自分の得意分野から攻める、というのがおすすめです。本に限らず、ネット上で興味のある記事を検索して、気軽な読み物などから始めるのもいいでしょう。

「読んでわかる」ために必要なこと

語彙は大切。それはいうまでもありませんが、読み物を楽しむには、単語さえ覚えればよいのでしょうか?答えはNOです。英文を読むには英文のルール、つまり文法知識も知らなければなりません。

語彙数が少ない、という学習者は、おそらく文法知識も十分ではないはずです。その状態で文のつくりを把握し、内容を正確に理解することができるでしょうか?読めた気になっているだけで、本当は意味をつかめていない…そんなケースが多いことは、塾で中学生に和訳させてみるとよくわかります。単語の意味はわかっていても、文のつくりを理解できずにとんちんかんな訳ができてしまう…せっかく労力をかけて読むのに、それではもったいないですね。

英字新聞やペーパーバックに挑戦しようとするなら、まずは中学英語レベルの文法知識を確かなものにしましょう。何とかなるだろう、と基礎なしでいきなり難しいものにトライする人もいますが、それは失敗のもと。語彙が少ないと思うなら、それなりのやさしいものから読み始め、文法事項もあわせて学習すべきだということを、どうぞお忘れなく。

●編集長からひとこと
ほとんどの学習者が初見では非常に難しいと感じる英検1級の語彙は、あくまでも日本人向けの英語の検定試験で最高水準というだけであって、これを習得すれば「なんでも」辞書引かなくても読めるか?というと、まったくそのようなことはありません。日本の小学校高学年~中学生くらいだと、よほど国語が苦手でないかぎり、まずまず一般的でやさしい本・雑誌・新聞は読めるのと同じですね。我々外国人が「第二言語」として英語を習得し使いこなすのであれば十分ですが(別に辞書を引いてはいけないというルールはないので…)、ネイティブレベルを目指している人は、バリバリ洋書を読んでさらに一万語以上を積んでいきましょう(笑)
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Kana

Kana

お茶の水女子大学卒。英検1級、TOEIC910を保有。現在、民間の中学生向け個別指導塾で英語講師として勤務している。確かな英語知識と学習経験/指導経験に裏打ちされた、分かりやすく丁寧なレビュー記事・コラムが好評。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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