『これで読めるエコノミストの英語』は、国際的に活躍するビジネスマンにとってほぼ必須の英字誌であり、また英語学習用としても上級者は目標としたい『エコノミスト』『フォーチューン』からの抜粋記事を題材としています。
著者の早野勝巳氏は慶應義塾大学商学部の教授を務め、ほかに『タイムとエコノミストで読む日本の現状』『経済英語』などの書籍を書かれています。
やや古いが、本格的な経済誌の記事をテーマ別に収録
収録されている記事は実際のエコノミストとフォーチュンの記事を、流通・保険・商社などテーマ別に、アメリカ・中国など国別に編集した内容となっています。
初版発行が1997年(平成9年)とやや古く、その周辺の記事で構成されているため、今日的な最先端のテーマを読むことを期待するとやや時代遅れな記事と感じられる面もあるでしょう。
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早野 勝巳『これで読めるエコノミストの英語』 |
しかし経済学という観点から見ると当時の経済の動きとメカニズムを知っておくことには意義があります。英語学習という観点からはやや離れますが、経済学とは分析の学問です。経済的な事象を分析することで、現在及び将来の類似した状況の先を読むことが目的ですから、ある意味歴史を学ぶことに似ている面があります。
そのため、過去の記事だからと切り捨てることはあまり良い態度ではありません。過去の事件もテーマ別に読んで事例の分析及び蓄積をすることが大切になります。
経済誌を定期購読する前のステップとして
英語学習の面から見ると、経済誌を読み込むことはビジネス英語や周辺知識を習得するために非常に有用な方法ですが、かなりハードルの高い方法でもあります。
経済や世界情勢は日々刻々と動きますから大量の記事が日々生産されており、どこかで聞いたキャッチフレーズではありませんが、経済誌を定期購読すると日々大量の英語のシャワーを浴び続けることになります。
そうすると、いちいち辞書を引いてわからない単語を頻繁に確認しなければならないような状態では、その大量の記事についていけなくなります。意気込んで経済誌や英字新聞を購読したものの、結局諦めてやめてしまう人の多くがこのパターンにはまっているものと考えられます。
その原因の一つが結局語彙力不足、それも経済誌独特の言い回しや多用される言語の語彙力不足です。
一般的に語彙力強化のための教材というと『速読速聴・英単語』シリーズや『DUO 3.0』等があり、これらは良い本ですが経済や国際情勢のみをターゲットとせず広い分野をカバーするという目的で作られています。速読速聴・英単語シリーズでは『Business 1200』しか分野特化型ではないため、本格的な経済誌を読むためのものとしては十分ではありません。
これらの本で基礎固めが終わっている段階の人であれば、経済誌を定期購読する前に、エコノミストやフォーチュンの記事を厳選し重要なパラグラフを抜粋して見開き・対訳形式にしている本書の学習を挟むことで、辞書を引いたり背景知識を調べたりといったストレスを減らした状態で次の実際の経済誌を読むというステップに入ることができます。
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早野 勝巳『これで読めるエコノミストの英語』 |
基礎的な語彙力ができている人向け
ページ構成は二色刷りでもカラー印刷でもなく、モノクロのはっきり言えばそっけないものになっています。『速読速聴・英単語』シリーズ同様、左ページに英文及び背景知識であるNOTES、右ページに和訳とボキャブラリー解説になっているのですが、ボキャブラリー解説については簡略です。
発音記号については必要に応じて書かれているという状態で、全ての単語に発音記号が記載されているわけではありません。そのためただ単に語彙力を鍛えようと思って使用すると、やはりいちいち辞書を調べる必要があり挫折する可能性が高くなると思われます。
ある程度語彙力がある人が経済誌に挑むための準備や、テーマ別に過去の記事を読むことでその当時の経済の動きを英語で勉強するために使用することがメインの目的の本ですから、一般的な英語の語彙力は十分ある人が使用すべき本であると考えられます。
そのため適正レベルとしてはTOEICスコア750~800以上、学習書のランクで言うなら『速読速聴・英単語 Business 1200』をざっと読んでも意味が分かるくらいの人がさらにステップアップするために利用していただきたい本です。
まとめ
- 格調高い経済誌であるエコノミスト・フォーチュンの2誌の記事を編集したリーディング教材。
- 平成9年の本だが、経済学の観点からは古い本だからと言って切り捨てるべきではない。
- 英語学習書としては経済誌を定期購読するための準備として適している。
- 構成はあっさりしているので、ある程度の英語力がある中上級者のステップアップ向け。