『大学入試4技能試験対応 シャドウイングで攻略 英熟語・語法』は、阿武内ひろし氏による高校生・大学受験生向けシャドウイング教材です。大学受験向け類書に『シャドウイングで攻略 発音・アクセント』も出版されています。
著者は大手予備校の英語講師を歴任してこられた方で、社会人向けの「いきなり英語スピーキング」などの本も書かれていますので、社会人の方も本を書店で見かけたことがあるのではないでしょうか。
大学受験レベルの語彙を習得しつつ、シャドウイング練習をする教材
現在の大学受験指導や高校の授業において、シャドウイングがどの程度普及しているのかはわかりませんが、シャドウイングと音読は英語4技能(聞く・話す・読む・書く)を延ばすために最良の方法です。
私が大学受験生の頃はまだシャドウイングという練習方法を知らず、ひたすら長文問題の英文やZ会の速読英単語シリーズなどを音読していたのですが、発音に変なクセがついてしまい矯正するために大学入学後に苦労した経験があります。
シャドウイングの練習方法、効果については本書の冒頭部分に示されていますので紙面に譲りますが、基本的な方法については十分に説明されています。
英文の内容や長さは初めて取り組む受験生にはかなりハードルが高いものになっており、いきなりこの内容で練習するのは負担が大きいかもしれません。
内容が難しすぎると思ったら、市販のより簡単なレベルから解説しているシャドウイングの本、例えば安河内哲也著『ゼロからスタート 正しい音読学習』などを併用すると挫折しにくいかもしれません。
英熟語・語法の習得と並行した高校生・大学受験生のシャドウイングの完成として
構成は左ページが英文、右ページが和訳や熟語などの解説や発音のツボ、語法の解説となっています。和訳のないページと、和訳のあるページが4ページセットが基本構成です。
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安武内 ひろし『大学入試4技能試験対応 シャドウイングで攻略 英熟語・語法』 |
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安武内 ひろし『大学入試4技能試験対応 シャドウイングで攻略 英熟語・語法』 |
基本的な進め方は和訳のないページでまず英文読解、その後音声を数回聞いてシャドウイングを繰り返すという流れになります。基本的な構成はZ会の『速読英単語』『速読英熟語』などと同じですが、英文の分量もかなりあります。
受験生は単語集・熟語集なども利用すると思いますが、シャドウイングの練習をするうちに単語や熟語は自然と覚えられます。英語にかけられる時間や学習の進め方の兼ね合いなどで、場合によっては本書を使ったら熟語集にはあまり時間をかけないといった取捨選択をしてください。
難関大学を受験するなら単語についてはやや不足している感じがありますが、熟語についてはおおむね標準的なものは十分なので、ある程度思い切った割り切りが必要になります。
それくらい学習負荷の高い本ですが、シャドウイングを通じて得られる実力は発音だけではなく語彙力・読解力・リスニング力、さらに英作文の力も伸びます(要はシャドウイングや音読を繰り返すことで頭の中に英文が蓄積され、「パクッて」書けるようになる、ということです)。
本気で英語を得意にしたい受験生には、気合を入れて取り組んでいただきたい良書です。
社会人のシャドウイング練習用教材としても耐えうる内容
シャドウイングは大学受験だけではなく、社会人のビジネス英会話の練習、英検やTOEICなどの各種試験にも通用する練習方法です。
社会人向けのシャドウイング教材は色々出ており選択肢もたくさんありますが、ある程度の内容・長さの英文を分野ごとに収録しており、英語だけでなく分野別の知識もそれなりに得られますから、この本でシャドウイング練習をすることも良い選択だと思われます。
ただし、本格的にビジネスの現場で英語を使いたい、英字紙を読めるようになりたいというような社会人向けの目的にはやや内容は不足ですから、あくまで基礎固めとして使ってください。
まとめ
- 大学受験向けの4技能(聞く・話す・読む・書く)を同時に伸ばすためのシャドウイング教材。
- 英文の長さや難易度はハードなので、挫折しそうならステップアップ式の別の本を併用した方が良い。
- マスターするための負担は大きいが、その分高い効果を見込むことができる。
- かなりの時間をかけて取り組むべき本なので、他の受験科目との兼ね合いで教材の取捨選択が必要になる。
コンセプトは素晴らしいしやり込めば相当な力が付きそうな本ですが、普通の大学受験生にいきなりこのレベルの英文をシャドーイングさせるのはちょっと酷ですね。大学受験生なら通常のリスニング(またはオーバーラッピング)と音読を主体にして、一部のページだけテキストなしシャドーイングするくらいでも十分だと思います。内容は難しいですが、前書きにあるように日本語訳をざっと一読してから英文読解に取り組むのも全然アリです。熟語レベルはおおむね『速読英熟語』と同じくらいで、大学受験の範囲は逸脱していないようです(最難関大でも十分通用します)。