『英文で覚える 英熟語ターゲットR』は、長文を読みながら英熟語を覚えることを目的に作られた大学受験向けの英熟語教材です。大学受験の英熟語に関してはこれ一冊で難関大学までカバーできます。
『英文で覚える 英熟語ターゲットR』は、センター試験レベルから難関大学二次試験までカバー
構成は以下のように『英単語ターゲットR』や、Z会の『速読英単語』『速読英熟語』シリーズとほぼ同じです。
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旺文社『英文で覚える 英熟語ターゲットR』 |
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旺文社『英文で覚える 英熟語ターゲットR』 |
収録されている英熟語は大学受験レベルから見ると必須・頻出語からハイレベルなものまで、ほぼ過不足なく収録されているものと考えられますので、熟語に関してはこれ一冊で十分でしょう。
英文の内容はネイティブの書下ろしによるオリジナルで、私が読む限りとても現代的なテーマ・英文の内容になっていると思われます。
さらに『英文で覚える 英熟語ターゲットR』を英熟語学習の基本にするのであれば、「穴を無くす」ために一対一対応になっている同社『英熟語ターゲット』も合わせて使うとより良いでしょう。考えられる併用方法の一例は、『英単語ターゲットR』の記事と同様です。
英熟語は文脈主義で学習することが最短ルート
文脈主義とはどういったものかということは、すでに『英単語ターゲットR』やZ会『速読英単語』の記事等でお話ししていますのでそちらに譲りますが、私は「英熟語」こそ文脈主義の中で覚えるべきだと考えています。
なぜなら「英熟語」という言葉は意味がややあやふやで、すぐに思いつくものでも
①他の語句と組み合わせられることで独特の意味になるもの
(set down~、run into~等)
②英語独特の言い回し、いわば文法表現に過ぎないもの
(apologize A for B等)
③ある語につく前置詞に注意すれば知らなくても意味が分かるもの
(keep off~等)
こういったものがひとくくりに「英熟語」と言われているからです。
①については、日本人の英語学習者や大学受験生では、知っていなければ意味が分かりません。
②については文法の知識がきちんとあればそれなりに対応することができます。
③については、文法の知識がきちんとあれば知らなくても意味を類推することは容易です。
大学受験では、「英熟語」について単独で大問一つ分の入試問題として出題されることもある一方で、こういったあやふやな定義になっています。
これまでに何度も「文脈主義で語彙力を上げていくことは、英単語・熟語だけではなく文法、読解、英作文全ての実力を同時に上げていくことができます」と申し上げてきましたが、上のように定義があやふやで様々な種類のものが含まれている英熟語こそ、文脈主義でマスターすることが結局は近道になります。
使用時期はある程度英語が得意になってから
教材作成の観点から行くと、文脈主義には一つ落とし穴があります。それは、英単語や英熟語の難易度から見た時に「ステップアップ式の英熟語の登場順を組むのが難しい」ということです。
通常の教科書であれば、簡単な分野から応用分野へといったように、易しいものから難しいものへ、順序良く勉強していくことができる構成になっていますよね。
一対一対応の英単語集・熟語集であれば単語や熟語とその意味を並べて行けば良いのですから、このような構成を取ることが簡単です。
しかし、文脈主義の教材では読解のテーマとなる英文が先にあるために、それがやや難しいのです。本書においてもレベル別の構成にはなっていません。
そのため、ある程度英語ができるようになってから取り組まないと途中であきらめてしまう人がいるかと思います。目安として、センター試験の過去問やセンター試験模擬試験で英語が6割以上できるようになってから取り組んでも遅くはないと考えます。
熟語に関しては英文読解の中でも触れることになりますし、先に書いたように文法知識やそれぞれの単語の意味から類推しても分かる、という種類のものもひとくくりに「英熟語」と言われていますので、あまり慌てることはありません。
先に英単語ターゲットRや、他社ではありますがZ会の速読英単語(必修編程度)等でじっくり地力をつけた後に取り組んだ方が結局は早く・楽にマスターできるでしょう。 『速読英熟語』は文脈主義で大学入試必須の語彙を習得することを提唱する教材の代表、Z会の速読英単語シリーズの熟語版の参考書です。 英熟語の習得だけではなく、語法問題対策にも効果大 タイトルは『速読英熟語 ... 続きを見る
あわせて読みたい【レビュー】速読英熟語:長文読解を通して「熟語・構文」を大量に覚える文脈主義型教材
まとめ
- 英熟語ターゲット1000収録語を文脈主義形式で覚える英熟語教材。
- 熟語レベルとしては大学受験の英熟語はこのシリーズだけでおおむね十分。
- 英熟語ターゲット1000収録語をすべてカバーしているわけではないので、穴を無くすために併用をおススメ。
編集長からひとこと
本書のマイナスポイントを強いて挙げるなら「熟語一覧のページに例文が載っていない」ということです(Z会『速読英熟語』には例文があります)。これは、同社『英熟語ターゲット』と一緒に2冊買ってほしいという旺文社の販売戦略上の都合なのかもしれません。個人的にはケチらないで、例文も載せたほうが勉強しやすいし売れると思うのですが…