社会人向けの『速読速聴・英単語』シリーズの『Core 1900』と、大学受験生向けの『速読英単語』シリーズは、それぞれの対象者のうちで英語学習者のスタンダードの一つと言っていいほどの地位を確立しているZ会の教材です。
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それでは、社会人が『速読英単語』シリーズを使うこと、大学受験生が『速読速聴・英単語』シリーズの『Core 1900』を使うことは可能でしょうか。比較をしながらお話しします。
『速読速聴・英単語 Core 1900』と『速読英単語』シリーズの収録英文テーマの違い
冒頭にも書いた通り、大きく分けると『速読速聴・英単語 Core 1900』は社会人向け、つまり仕事で英語を使いたい人向けの教材です。
そのため、収録されている英文のテーマは社会人における一般教養といった内容で、環境、教育、社会、政治・国際問題、経済等のラインナップになっています。
その一方で、『速読英単語』シリーズは大学受験生向け、つまり想定読者が高校生ですから、政治・経済といったテーマは収録されているとはいっても多くはありません。
『速読速聴・英単語 Core 1900』よりもっと幅が広く、心理学的なテーマや文化的なテーマまで収録されています。
これは、『速読英単語』シリーズは大学受験ではどのテーマから出題されるか分からないからできるだけ多くの内容を盛り込もうとしたこと、また想定読者が高校生中心ですからできる限り多くの分野の英文に触れてもらうことで、幅広い興味を持ってもらうことも狙いとした編集方針と言えるのではないでしょうか。
社会人が『速読英単語』シリーズを学習することの是非
以上のように考えると、社会人が『速読英単語』シリーズを学習することを否定はしませんし他の効用はありますが、即効性はありません。
日本語に置き換えると、社会人が高校生の国語の教科書で勉強しているようなもので、ビジネスに即役立つというようなものではないと思われます。
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風早 寛『速読英単語 必修編』 |
つまり、普段仕事の上で触れるテーマや問題、話題とやや離れたものが、『速読英単語』シリーズには収録されているので効率という観点から見るとちょっと無駄が多いのではないかということです。
『速読英単語』シリーズに収録されている英文の長さについても『速読速聴・英単語 Core 1900』とさほど変わりませんから、より長い長文を読解するという練習にもなりません。
社会人が速読英単語シリーズを勉強する場合、それは効率のためではなく、あくまで「趣味」と割り切った方が良いのではないでしょうか。
普段触れない内容を読むことで、余暇の時間に深めたい知識に触れるきっかけとしての利用法ということです。 『速読英単語 必修編』は主に大学受験を意識した英単語教材です。同シリーズにはセンター試験レベルが中心の『速読英単語 入門編』、最難関大学合格まで視野に入れた『速読英単語 上級編』があります。 「これも ... 続きを見る
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大学受験生が『速読速聴・英単語 Core 1900』を学習することの是非
その一方、大学受験生であれば、社会人向けの『速読速聴・英単語 Core 1900』を学習することは、よりメリットがあります。
二つの本の同じテーマを比較した場合、やはり『Core 1900』の方の収録英文の方がやや難しいところまで踏み込んでいますから、政治経済・国際問題といったテーマが出題される大学を志望しているのであれば、『Core 1900』を使って学習しても問題ないでしょう。
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松本 茂『速読速聴・英単語 Core 1900』 |
ただし、大学受験向けとしてはやはり無駄がある勉強です。
大学受験は入試日までの期限が切られていますから、大学受験生向けの単語集や赤本等をマスターしてから、時事問題対策に軽く、といった程度で構いませんし、むしろそうするべきです。
よく入試直前期になると、出題傾向として最近の社会の動き等が出題される大学の受験生は時事問題で右往左往するものですし、その気持ちは良く分かりますが、だからと言って他の優先してやるべき教材がまだマスターできていないのに、社会人向けの教材まで手を広げることはあまり感心出来ることではありません。
時事問題は基本的な高校生の知識があれば解けるように作られているはずですし、それでも万一できなければ、入試ではできなくてもいい問題と判断できます。
ですから、大学受験生が必ずしも大学受験向けでない『速読速聴・英単語 Core 1900』を使って勉強することにはやや慎重になるべきですし、やったとしても「気分転換のつもりで、軽く」で良いと思います。 『速読速聴・英単語 Core 1900』は、Z会『速読速聴・英単語』シリーズの核となる英単語帳です。『速読速聴・英単語』シリーズは、長文の文脈の中でボキャビルを行う「文脈主義」を特徴としています。 同 ... 続きを見る
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まとめ
- 『速読速聴・英単語 Core 1900』は社会人向け、速読英単語は大学受験生向けという前提を忘れるべきではない。
- 『Core 1900』はテーマがビジネスマンの一般教養、『速読英単語』シリーズは高校生の教育のためより広いテーマを収録。
- 社会人が速読英単語を勉強することはあくまで「趣味」「余暇活動」として考えた方が良い。
- 高校生は『Core 1900』を使うなら、大学受験向けの本をマスターした後で、時事問題対策として「気楽に、軽く」。
編集長からひとこと
『速読速聴・英単語 Core 1900』の英文が直読直解で読めるなら、英語に関しては最難関大合格レベルは確実にありますね(最難関大の英語といっても高校生の英語なので社会人から見れば比較的易しいですが)。社会人が英語をやりなおす場合は、『Core 1900』と次の『Opinion 1100』の語彙まで習得すれば、大学受験では最高レベルの『速読英単語 上級編』『話題別英単語リンガメタリカ』は特にやらなくてもよい語彙力になっているはずです(英検準1級程度)。そして、この二冊のあとくらいに英字新聞(The Japan Times)を読みながら『Business 1200』を始めると、いい感じに語彙力が高まっていきますね。