無理のないレベルから英語を多く読んでいき、英語力を上げていく「SSS方式」の多読法を紹介しているリーディング教材です。
英語多読の方法をわかりやすく解説
本書では英語多読法であるSSS(Start with Simple Stories)方式での多読法の解説だけでなく、利用しやすい教材までをわかりやすく紹介しています。
SSS方式では、①絵本等の易しい本から始め、②段階的にレベルを上げ、かつ③多種、多様、大量の本を使って多読を行います。段階的多読法の解説だけでなく、シャドーイングの方法、教材として利用するペーパーバックや読み物の紹介をしています。
英語に限らず学習法の解説の本では往々にして「これをこうしてこうすればよい」といった紋切り型で、ある意味読者に勉強方法を押し付けているだけのものや、読者の不安や疑問に十分答えられていないものも見られます。しかし、この本ではなぜ多読が有効か、多読を実践するにあたって読者が抱くであろう疑問点が解消されるよう配慮して解説されています。
特に英語が得意ではない方は、「多読は自分でもできるのか?多読で英語力は向上するのか?」といった不安を持ちやすいかもしれませんが、そういう不安を日本語でわかりやすく解説しています。ロードマップが掲載されており、ステップアップの状況もわかりやすくなっています。
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古川明夫、上田敦子『英語多読入門』 |
また、シャドーイングの方法も「多聴のすすめ」として掲載しており、リーディング力だけでなくリスニング力の向上についても解説しています。その解説も「~しなければならない」方式の、肩に力が入った方法ではなく、ゆるく行っても良いという方法です。英語に不得意意識を持つ原因の一つに、間違うことを怖がる過剰な完璧主義がありますが、この問題を平易な言葉で解決してくれる本になっています。
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多読に利用する教材をレベル別に紹介
英語力を向上させるのにとにかく多くの英文を読むことは、ネイティブでない限りほぼ必須です。しかし、「どういう本を読めばいいの?」「手に取った英書が難しすぎて結局読めなかった」等の疑問や挫折は、事前に目安のレベルを把握していなければ常に起こる問題です。特に周囲に実際に手に取って選べる英書専門店等がない場合は深刻です。
本書には英文多読の実践に利用する本を読みやすさ別に紹介しており、この問題を解決してくれます。レベルさえわかれば、ご自身で行ける場所に取り扱いがなくても、インターネット等で購入すれば良いのですから。紹介されている本のグレードも、語彙・文法・一文の長さ等から読みやすさレベル(Yomiyasusa Level。YLと表記されています)を設定してそのレベルごとに紹介されています。
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古川明夫、上田敦子『英語多読入門』 |
収録されている英文は6つですが、絵本レベルからペーパーバック小説程度の長さ(但し収録されている小説は紙面の都合上1/3程度を収録)までとなっています。
YLレベル毎の紹介書籍と、収録英文を読み比べていけば概ねどのレベルから始めれば良いか分かるようになっているので、どのレベルの方も利用可能です。
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古川明夫、上田敦子『英語多読入門』 |
シャドーイング学習にも使えるCDが付属
吹き込み音声の速度は、ストーリーによってまちまちです(やさしい英文は遅い)。約80~130語/分と、かなりゆっくりなものから標準的なものまで収録されています。男性の話者と女性の話者が交互に朗読しており、しっかりとした発声で聞き取りやすくなっています。書籍の中で推奨されているように、単にリスニングをするだけでなく、シャドーイング学習にも活用できるように製作されているようです。
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古川明夫、上田敦子『英語多読入門』(1枚組) |
語学専用プレーヤーを使ってディクテーションを効率化
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初心者だけでなく、上級者もヒントを得られる
絵本・小中学生レベルから書籍を紹介していますので、初心者の方も無理なく使えます。また、英語学習が進んでいる上級者が陥りやすいワナの一つに、「The EconomistやWall Street Journal等の難しい記事ばかり読もうとして、一読しても理解度が低いことに悩んで英語学習自体から遠ざかってしまう」等の問題があります。
英語学習が進んでもレベルの違う英文に多く触れることは重要です。それは学習に飽きないためだけではなく、口語表現や同じ語彙の別の使われ方を学ぶためでもあります。上級者の方でもたまに息抜きを兼ねて、難易度の低い平易な本を読むことで目から鱗が落ちるような経験をしたり、自分に自信を無くさない安定剤としての効果を得ることもできます。モチベーションの維持のためにも読む価値のある一冊と言えるでしょう。
まとめ
- 英語多読の方法をわかりやすく解説したリーディング教材。
- 多読の方法だけでなく、利用する教材も紹介。お近くに英書販売店がない方にも便利。
- 読みやすさレベル「YL」を設定して自分に合った教材を選ぶことができるように配慮。
- 収録英文は初学者レベルから中上級者レベルまで段階ごとに1つずつ収録。