「英語で読むジェフ・ベゾス」はamazon.comの創業者で現在取締役会長(社長兼任)、更にワシントン・ポストのオーナーであるジェフ・ベゾスを題材にしたリーディング教材です。
ITバブルを生き抜いて成長を続けるアマゾン創業者のエピソード
ジェフ・ベゾスの学生時代、アマゾンの草創期、発展期、ジェフ・ベゾスの人間性がそれぞれメインとなる4章立ての構成になっています。巻末にはベゾスの名言のいくつかが収録されています。
文章自体は伝記風のものではなく淡々とエピソードや考え方を述べていくものになっており、ビジネス成功者の一人を客観的に紹介していくものになっています。
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マイケル・ブレーズ『英語で読むジェフ・ベゾス』 |
アマゾンは今ではほぼ知らない人はいないくらいのインターネット通販サイトです。1990年代末のITバブル期に創業・成長し、ITバブル後も成長を続けた数少ない企業の一つです。
今では食べログなどでもすっかりおなじみになったネット上の「口コミ」をユーザーが投稿でき、また別のユーザーがそれを見ることで新たな顧客を獲得するツールにする戦略にいち早く目をつけるなど、新たな販売方法をいくつも発明してきました。
日本国内でも大規模物流センターを開設し、すっかりメジャーな通販サイトになっていますが、創業者のことを知らない人は意外と多いのではないでしょうか。
その創業者であるジェフ・ベゾスは「合理主義者、倹約家、休みも週末も関係なく会議を招集して、家族と仕事のバランスを取りたいと考えていた社員は、重役ですら会社を去っていった」などのエピソードが有名な、議論を呼ぶ経営スタイルを取っている人です。
本書では彼に対して批判的でも肯定的でもなく、客観的に彼の生い立ちや経営スタイル、問題に対する考え方が分かるエピソードを述べていくことで、読者に考えさせる内容になっています。
読解だけでなく、スピーチやディベートの訓練もできる
すでに述べた通りアマゾンはITバブルの巨人の一つですので、ビジネスマンであればユーザーとして利用するだけではなく、経営モデルとして知る価値がある企業の一つであると思います。そのためビジネスマンには、ダイヤモンドなどのビジネス誌の特集を読む感覚で読むことがお勧めです。
掲載されている英文はビジネスに関する用語が頻出しますので、語彙の難易度はやや高めです。ある程度スムーズに読むためにはTOEICスコアでは700程度は欲しいところです。語彙の解説は英文ページの下部についているとはいえ、解説はそれほど詳しくないのでTOEICスコア600台位の人は辞書を引きつつギリギリついて行けるかどうかといったレベルです。
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本書は語彙を増やしたり英文理解力を高めたりするのに使うというのはもちろんですが、「書いてあることに賛成か、反対か、立場を決めて読む」ための練習用として使うと最大の効果を発揮すると思います。
英語のスピーチやディベートに臨む際には、場数を踏むだけでは不十分です。本を読む際に暫定的に自分の立場を決めて、書いてあることに反論する場合、あるいは賛成しつつ自分の意見を述べる場合には、どのように論理を組み立て、語彙を選んで英語で構築していくか考える、地道なトレーニングを欠かすことはできません。
その場合にこの本のような「議論を呼ぶ」経営者のことを、できる限り著者の主観を交えず客観的にエピソードを紹介しているような本を読むことはとても良いトレーニングになります。
語彙や言い回しのストックを増やすという面では、名言の引用などは英語では多く使われる方法ですので、本書の中で気に入ったフレーズを覚えることや、巻末の「ベゾスのことば」の項目を読んでいくことで高い効果が得られるでしょう。
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マイケル・ブレーズ『英語で読むジェフ・ベゾス』 |
比較的速いリスニングで高速な発音の聞き取りに慣れる
リスニングCDの発話速度は約160~180語/分程度で、比較的速い録音になっています。ナレーターは全編を通して男性で、感情を込めない淡々とした朗読となっています。
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マイケル・ブレーズ『英語で読むジェフ・ベゾス』付属CD(1枚組) |
語彙の難易度は比較的高い(とはいっても、DUO 3.0の語彙を少し上回る程度です)ので、上級者以外の方が利用する場合は、まずは英文を読んで内容を理解してから聞き込んでいきましょう。
まとめ
- amazon.comの創業者、ジェフ・ベゾスを題材にしたリーディング教材。
- 著者の主観を交えず客観的な文章で構成。英文レベルはビジネス向けでやや高め。
- 批判または賛成しつつ読み、自分の考えを英語でまとめる練習に良い題材。
- ジェフ・ベゾスの名言セクションは、英語スピーチのネタとしても使える。