難関大入試に匹敵するといわれる英検準1級
英検準1級の難易度は、難関大学の入試問題レベルといわれます。では、難関大の代名詞ともいわれる早稲田・慶応の入試問題と英検準1級とでは、どちらが難しいのでしょう?
そこで、早慶のなかでも難しい部類に入るといわれる、慶応大学法学部の入試問題(2019)を、実際に解いてみることにしました。
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準1級と慶応大(法)の入試を比較する
英検準1級の筆記試験はライティング(英作文)含め90分、慶応大(法)は80分です。準1級のライティングには少なくとも15分は確保したいところなので、リーディングにかけられるのは多くて75分。そう考えると、読むべき英文の量は準1級のほうが少し多めでしょう。また、問題の指示文は双方とも英語です。何を問われているか、すばやくつかまなければなりません。
私自身、準1級は実際の試験・過去問とも複数回解いていますが、慶応(法)の問題は初めてトライしました。どちらの試験も、ゆっくり考えている暇はないですね。頑張って解いても時間ぎりぎり間に合うかどうか…という感じでした。
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語彙のレベルは?
準1級合格に必要とされる語彙数は、7500~9000ほどといわれています。準1級の筆記では、冒頭から語彙力そのものを問うセクション(25問)があります。単語がわからないと、ここではまったく歯が立ちません。語彙学習が、準1級の大きなハードルといわれる理由です。
慶応(法)の試験で出てくる語彙も、準1級と同等程度。ときに英検1級レベルの単語も見られました。単語帳で、つづりと意味だけ覚える丸暗記では不十分。他動詞・自動詞の区別や、品詞、前置詞とのコンビネーションなどを知らないと、答えられない問題が多いです。
発音・アクセント問題があるのも、慶大の特徴かもしれないですね。ふだんから音声を取り入れた学習をしていれば、発音問題は点をとりやすい「サービス問題」になります。逆に、黙読ばかりの学習をしている人には、難しく感じることでしょう。
長文問題は?
準1級の長文問題は、語句空所補充と内容一致選択です。語彙力と、正確な文法知識・読み取りの力が必要です。問題文の内容もアカデミックで、日本語で読んでも難しい内容です。過去に出題されたテーマを見ても、社会学的なトピックが多くなっています。
問題文には抽象的・観念的語彙が増え、複雑な思考を表現した文章になってきます。アウトプットも重視され、自分のいいたいことを論理的に、正しいルールにのっとって表現できることが必要とされます。
慶大入試も準1級同様、問題文は難解です。読んで理解するだけでなく、適切ないいかえ表現や、文脈に即した選択肢を選ぶ力も要求されます。問題の指示もすべて英語ですし、設問の仕方が複雑で、戸惑いました。過去問を多く解くなど対策をしていないと、制限時間中にすべて解くのはかなり難しいでしょう。
慶大入試には準1級のような英作文はありません。しかし2019年の入試では、英文エッセイの草稿を添削するという設定で、「選択肢の中から最も適切な表現を選べ」という問題が出題されていました。こういった問題は、日頃から英作文のトレーニングをしていない受験生には難しいはずです。選択肢も非常にトリッキーなものが多く、迷いました。 2016年度実施分から実用英語技能検定(英検)で導入されたCSEスコアにより、4技能すべてに等しくスコアが配分されるようになりました。 とくに、スピーキングを除く3技能を測る1次試験では、その突破のた ... 続きを見る
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準1級と慶大入試で求められるスキル
準1級では高校までの基礎的な語彙に加え、より高度な語句をどれだけ知っているか、そしてアウトプットを含め、どれだけ実践的な英語を使いこなせるか…が問われます。
いっぽう慶大入試は、英語力はもちろんですが、それ以外のポテンシャルも測っているのでは…と感じる内容でした。高得点を狙うには、これだけの語彙を学習する努力、さらに思考力・判断力といったものも求められるからです。
英検2級や大学入学共通テストレベルなら、高校までの授業でもクリアできます。しかし英検準1級・慶大入試レベルになると、どちらも学校英語プラスαの勉強(英字新聞や英語ニュースサイト、オンライン英会話など)が必要になってくるでしょう。
TOEICとの比較
では、TOEICとの比較についてはどうでしょうか?
準1級と同等程度のTOEIC(L&R)スコアは、730くらいといわれることが多いようです。しかし私の実感では、準1級合格=730というのは低すぎる気がします。準1級合格者が、もしTOEIC対策なしで受けたら730くらいかもしれませんが…。準1級相当のスコアといわれたら、実際にはTOEICで800くらいではないかと思います。 TOEICで600点と言えば全体のおよそ6割ですが、730点となると7割以上になります。そしてこのレベルになると、まぐれで取れる点数ではなくなってきます。この辺りは、良くも悪くも実力がはっきりと出る点 ... 続きを見る
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3つの試験の難易度を比べると
トータルで考えれば、「英検準1級(筆記)=慶応(法)>TOEIC730」というのが妥当と考えます。しかしリーディングのみなら、慶応のほうが難しいかも…?と思える内容でした。
準1級も慶大入試も、学校英語を超えた、主体的な学習が必要です。合格をつかみとるのは簡単なことではありません。しかし高みをめざして努力すれば、その分、得られるものも大きいことでしょう。 東京大学の入試問題と英検1級、TOEICを比較する ヤフーの知恵袋を見ていると、「東大生なら英検1級なんて簡単に合格できるのですか?」という質問がありました。 大学受験と英語の検定試験(TOEICや英 ... 続きを見る
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編集長からひとこと
慶大の英語は確かに英検1級水準の語彙が若干含まれていますが、だからといって1級の単語帳(『英検1級 でる順パス単』など)をやらなければいけない、というわけではありません。かけた勉強時間に対する見返りが小さいからです(1級単語を知らなくても解ける)。1級の単語は、例えば私立専願で科目数が少なく(※慶応は2科目+小論)、よほど勉強時間に余裕がある場合を除いてやる必要はありません。まして科目数が多い国立大との併願で慶大を受験する場合であれば、絶対にやるべきではないですね。