他に類を見ない「英語喉」と呼ばれるユニークな発音メソッドを学べる参考書です。
英語喉とは
『英語喉50のメソッド』は、よりネイティブに近い英語発音を学べる本です。ネイティブスピーカーと日本人の発音の違いが、独自の観点から分析されています。
本文は5つの章に分けられていますが、セオリーを要約すると次の2点にまとめることができます。
それは、
①「英語は喉で響かせる」
②「英語のリズムは『子音・母音・子音』の3ビートであり、日本語とは異なっている」
ということです。
①喉で響かせるということ
著者は、「英語は口というよりも喉で発音するものである」と述べています。つまり、英語は口先でなく、喉の深いところで発音するものであり、それゆえに英語話者の声は、日本語より深く立体的に響く、というわけです。
これまでの発音指導といえば、口の形や舌の動きを中心に解説されてきました。たとえばwの音は口をすぼめて、とか、rの発音は舌を丸めて……などです。しかし、著者が主張する「喉発音」は、それらとはまったく違うアプローチを用いています。トレーニングの仕方について、詳細な説明とイラストがついているのですが、読むだけではなかなかピンとこないかもしれません。CDがついていますので、それを聞きながら説明を読むことをおすすめします。
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上川 一秋『英語喉 50のメソッド』 |
著者は本文の中で、「アクビエリア」「ゲップエリア」「喉ブレーキ」などの独特なキーワードの他、従来とは異なるオリジナルの発音記号を使っています。トレーニングにあたって、読者はこうした用語や発音記号の読み方を覚えなければなりません。説明は少々複雑ですが、基礎的な発音が既に頭に入っている人なら、読み進むうちに理解できるでしょう。
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上川 一秋『英語喉 50のメソッド』 |
②英語と日本語のリズムの違い
もう一つのポイントは、英語と日本語におけるシラブル(一拍で発音する音の単位)の違いです。日本語の場合は通常、ひとつの文字をシラブルと考え、子音と母音の2つで1セットとします。しかし英語のシラブルは「子音+母音+子音」の3つで1セットと考えられるため、リズムの違いが発音に影響するというわけです。
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上川 一秋『英語喉 50のメソッド』 |
前述の発音記号の読み方を学ぶと、シラブルについての意識も変わります。記号に従って読んでみると、確かにネイティブの発音に近くなったような気がしました。
この感覚を学ぶと、英語話者が日本語を発音するとき、なぜ「KIMONO」が「キ・モ・ノ」でなく、「キムォノォ」のような発音になってしまうのかについても「なるほどな」と納得がいきます。音の連結(リエゾン)が苦手な人にも、参考になるでしょう。
メソッドを試してみると
本書の最初と最後の部分には、メソッド練習前と練習後を比べるための、サンプル文が載っています。まず、最初にこれを読んで録音しておきます。そして、メソッドを学んだあとで再度録音して聞き比べると、学習の効果を確認することができます。
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上川 一秋『英語喉 50のメソッド』 |
読んだあと、実際に録音して比較してみました。まず気づいたのは、声のトーンが低くなり、落ち着いた印象になったことです。練習前は軽く、厚みのなかった発音が、深く大人っぽい響きになりました。アクセントのめりはりもくっきりとして、抑揚も豊かになったように感じました。
初心者よりも、ある程度英語に慣れた人向け
このメソッドは、既にある程度英語に親しんできた人のほうが試しやすいでしょう。「単語はだいたい読めるし聞けばわかる。けれども、自分が発音するとどうも日本人っぽい発音になってしまう」という人は、学んでみると改善のヒントをつかめるかもしれません。
使われている例文のレベルとしては中学英語ですが、単語を見ても即座に読めない、というビギナーには、やや難しい内容です。英検準2級くらいから上の人であれば、スムーズに理解できることでしょう。
まとめ
- 非常にユニークなメソッドで、ネイティブに近い発音を学べます。
- 喉を使って響かせること、英語のシラブルのリズムをつかむことがポイントです。
- 初心者よりも、英単語の発音をある程度理解している人に適しています。