朝日新聞の名物コラム「天声人語」を使って時事英語を学べます。年4回の季刊発行で、四季折々の話題も堪能できます。
朝日新聞で長期連載のコラムを英訳
「天声人語」とは、朝日新聞で100年以上にわたって連載されている朝日新聞の名物コラムです。さまざまな時事問題をとりあげており、大学入試の問題文にもよく採用されています。
書籍版『英文対照 朝日新聞 天声人語』シリーズは、3カ月分の天声人語をまとめて年4回発行、すでに通算180巻以上が刊行されています。英訳は朝日新聞の国際編集部で、情報サービス配信サイト「A stand(エースタンド)」にも「和英対照・天声人語」として掲載されています(こちらは有料購読サイトのため、情報を閲覧するには月額料金がかかります)。
また、英文のみなら朝日新聞サイトの英語版「The Asahi Shimbun」(http://www.asahi.com/ajw/opinion/vox/)にて1カ月分のバックナンバーを無料で閲覧できます。
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記事を日本語と英語の両方で味わう
本文は上半分に掲載月日と日本語のコラム(記事1本分・約600字)、下半分に英訳(約450ワード)というレイアウトです。日本語文の漢字にはふりがながあります。「天声人語で日本語を学びたい」という外国人読者にも配慮してあるそうです。
1日分が2ページのボリュームで、さらに1ページを使って英文の訳注・語彙説明がついています(一部、英訳がなく日本語文のみの掲載となっている記事もあります)。
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朝日新聞論説委員室『英文対照 朝日新聞 天声人語 2016春』 |
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朝日新聞論説委員室『英文対照 朝日新聞 天声人語 2016春』 |
新聞のコラムでは、限られた字数内で、言いたいことを的確に表現しなければなりません。直近のできごとや、身近な情景を選んで読者の興味を引きつけつつ、筆者の主張・結論へどのように導くのか。こうしたコラムならではの文章を、まずは味わっていただきたいものです。そして、それを英文で表すとどうなるかを考えながら、英訳文に目を通してみてください。
微妙なニュアンスを英語で表現する
取り上げられているテーマは、日常の何気ないひとこまから、世界情勢まで多岐にわたります。こうした内容をスムーズに英語にできるとすれば、かなりの上級者でしょう。試しに英訳しようと思っても、なかなか簡単には行かないはずです。
日本語では主語を省略することが多いので、それを補っていく必要がありますし、さらに、日本語のことわざや川柳など、直訳しにくいものもあります。そうしたものは、かみ砕いて説明を加えねばなりません。それを踏まえてあらためて英訳文を読むと、その自然な表現に「なるほど」と感心させられます。
英文自体はとても素直でわかりやすいので、語彙の注釈を見て読んでいけば、英検2級、TOEIC600程度の力で十分理解できるでしょう。大学入試の2次試験で英作文がある、という受験生にも役に立つかもしれません。
ですが、この本の良さを最も生かせる学習者は、たとえば日本の風習や考え方を外国人に伝える通訳ガイドや、翻訳者をめざす人ではないでしょうか。日本の文化を紹介する際の、ちょっとしたネタとしても、有効に利用できるはずです。
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朝日新聞論説委員室『英文対照 朝日新聞 天声人語 2016春』 |
季節感のあるコラムを味わいつつ、洗練されたわかりやすい英語表現を知るにはぴったりの本です。また英語学習用としてだけでなく、時代を振り返る読み物としても興味深い教材といえましょう。
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まとめ
- 朝日新聞の名物コラム「天声人語」を、日本語と英語の両方で読めます。
- 日本語ならではの言い回しや、日本の文化・暮らしについての英語表現を学べます。
- 英検2級、TOEIC600程度の力があれば楽しんで読めます。通訳・翻訳関係の仕事をめざす人におすすめ。
脚注が入っている語彙は英検準1級~英検1級レベルのものが多いですが、それ以外は英検2級くらいの語彙で構成され、また構文も標準的なのでとても読みやすい英文ですね。実はボキャビル素材としても極めて優秀なシリーズです。「こち亀」の最終回を題材としたコラム(2016年秋版 2016年9月18日)の英訳が読めるのは、『英文対照 天声人語』だけです(笑)