英語学習に当たって、ある程度のレベルに達したらボキャビルや英文読解は、英字新聞や英字雑誌、いわゆる英字ニュース誌が最も良いと私は考えています。その理由と、読み方の一例をお話しします。
英語学習において英字ニュース誌をお勧めする理由
なぜ小説やエッセイ、映画ではなく英字ニュース誌なのかということの理由は、一言で言うと「読みやすく、分かりやすく、ビジネスに活かしやすい」ということにあります。
読みやすいこと
小説やエッセイは、特に名詞において顕著ですが、細かく心理・情景を描写する傾向が強く挫折してしまう可能性が高い教材です。
一言で「鳥」と言って通じるような場面でも、より情景描写を細やかに行うために「猛禽類 (raptor)」「鷲 (eagle)」「カラス(crow)」などと、その鳥が何かまで説明しようとするケースが多くなっています。
その点、ニュース誌であれば鳥ならば bird の一言で言ってしまうことも多くなります。程度の問題ではありますが、このような細かい名詞を見ることが多くなり過ぎて、あれもこれも覚えなければならない、調べなければならないといった状態に陥るリスクは小説やエッセイに比べて低いと言えます。
分かりやすいこと
ニュース誌の英文は基本的に直線的、かつ論理がスッキリしています。「誰が、どこで、なぜ、こういうことをした」ということを伝えるのが基本ですから、文章の論理が飛躍したり場面が飛んだりといったことはあまりありません。
小説であれば、数行前まで現代の話をしていたのにいきなり回想シーンが入り、過去の話が出てくるなどということは日常茶飯事ですが、これでは英語力自体がまだ不十分な学習段階であれば話の流れを見失う可能性が高くなります。
ビジネスに活かしやすいこと
多くの人が英語を勉強する理由は、単なる趣味ではなくビジネスに活かすためではないでしょうか。
小説やエッセイなどは、確かに英文読解力を向上させ、より深く英語を「楽しむ」ためには良い材料ではありますが、ビジネスにそのまま生かせるでしょうか。
たとえば、ビジネス文書は「簡潔に・わかりやすく自分の意図を伝える」ためにあるものですから、小説のような言い回しが避けられるのは日本語でも英語でも共通です。
英字ニュース誌は先に述べたように論理も話の流れも直線的ですから、ビジネス文書に要求される構成を学ぶ良い材料です。また、英字ニュース誌は定期購読するとインターネット上の会員サービスの利用権がセットになる場合が多いですから、ある一つのテーマの記事を掘り下げて調べていく、関連情報を収集するということがやりやすくなっています。
ある業界について記事を集める、ある事件について記事を集める、これがやりやすいということは自分のビジネスで必要な情報収集が容易であると同義です。これを「テーマリーディング」などと言うこともありますが、市場や業界の分析に非常に良い読み方です。
英字ニュース誌に取り組む際の心構え
英語を勉強するために英字ニュース誌を読むとき、特にニュース誌に取り組み始めたばかりの場合に必要なことがあります。それは、「隅から隅まで全ての記事を読まなければならない」という考え方はいったん捨てるということです。
英字ニュース誌は全記事を読もうとするとそれなりの分量があります。特に「英語で知識を深める」ためではなく、「英語自体の勉強をするため」に読む方にとって、一つの記事を読むだけでもかなりの負担になるでしょう。
社会人の方であれば仕事で時間のない時もあります。学生の方でも英語ばかり勉強しているわけにもいきません。あまりにも完璧主義になり過ぎることは、挫折して投げ出してしまう可能性を高めるだけです。言い方はやや悪いかもしれませんが、肩の力を抜いてある意味適当に取り組んでください。
その一方で、「全部は読まないがこれだけは絶対やる」ということも決めておいてください。毎日(あるいは何曜日の)、毎週、このニュース誌のトップ記事だけは必ず読み切る、このテーマを扱った記事だけは必ず読む、こういう最低ラインは設定しておきましょう。あまりにも適当にやりすぎても、結局投げ出してしまうだけですから。
私は大学一年生の時にTIME、Newsweekを定期購読したのが英字ニュース誌を読み始めた最初ですが、当時は毎号トップのカバーストーリーだけは必ず読み切ってその週のうちに10回音読するということは守りました。他の記事は見出しだけ眺めて興味があったとき、かつ時間のあったときに読むという読み方でした。
英字ニュース誌の読み方 初級者向け個別の記事編
英字ニュース誌のうち、日本人の英語学習者向けに加工されているものは私の知る限りThe Japan Times STだけですから、丁寧に単語や熟語、文法の解説などはありません。
そこで、自分で読むと決めた記事には、どんどん書き込みをしていきましょう。分かりにくい構文のとらえ方のヴィジュアル化(自分のやり方で構いません。スラッシュを入れても、カッコでくくっても、矢印を引いても良いでしょう)、単語の意味をその下に書き入れる、どんどん書き込んで「汚して」ください。行間が狭すぎて書き込むのが難しいのであれば、拡大コピーして記事をノートに貼りつけてスクラップしてしまうことも良いでしょう。
こうすることで、その記事を読めば分からなかった語彙の意味も、構文のとらえ方も、全部分かるようにしておきます。その上でできる限りの回数、目標回数を決めて音読しましょう。
なお、私は分からなかった単語・熟語のカードを作ることは必要ないと思っています。英字ニュース誌を読み続ける限り、重要な語や頻出の言い回しは何度も何度も違う記事で見かけることになります。その中で定着させていけばよいのです。
分からない語はどうせたくさん見ることになりますし、どれだけ勉強が進んだとしても完全になくすことは不可能です。カードを作ることは「作業」であって「勉強」ではありません。ニュース誌を定期購読すれば読むべき記事はどんどん手元に届くことになります。
カードを作っているうちに次号の記事を読む時間すらなくなりました、ということになるのが一番いけないことです。カードを作る時間があるなら次号が届く前に、次号が発売される前に一回でも多く音読しましょう。そもそも時間をかけてまとめた単語が全然重要でない語であった、接頭語や接尾語のルールを知っていれば意味は分かるもので暗記すべきではない語であった、などということも多いわけですから。
英字ニュース誌の読み方 中・上級者向け
英語自体の学習がかなり進んでいる方は、あるニュース誌を購入したら次号が発売されるまでの間に全ての記事を読み切るという、英語を読む絶対量を増やす読み方に移行する方が多いでしょう。
それに加えて、ぜひ「テーマリーディング」をしてみて欲しいと思います。これはある一つのテーマを同じニュース誌の過去記事にさかのぼって深く読むこと、加えて同じテーマを扱った様々な別のニュース誌の記事に当たることを意味します。同じニュース誌の過去の記事に当たることで、そのテーマが時系列的にどのように推移してきたかの詳細を知ることができます。
また、他のニュース誌の同じテーマの記事も併せて読むことで、別の視点から見るとどのように報道されているのか、ということを知ることができ、これによって様々な角度からのものの見方、考え方を知ることができます。これを通じてビジネスにおいて重要な要素のひとつである、客観的なものの見方の養成に役立ちます。
単語カードですが、私も昔はカード(お手製の単語帳?)を作らなかったのですが、最近はWeblio単語帳という便利な単語帳サービスがありまして、高速にマイ単語帳を作成することができます(笑)Kindleで洋書を読んでマーキングしておいた単語をWeblioのサイトで休日にまとめて単語登録したりしています。それを細切れの時間にスマホのWeblioアプリで復習しています。また、そもそも英字誌(私の場合はNewsweekですが)を読むときはWeb版をWeblioプラグインを入れたChromeで読めば、ダブルクリック一発で辞書引きができ、かつ引いた単語をWeblio単語帳に即座に登録することもできます。Weblio単語帳は昔ではありえなかった便利なサービスなのでお勧めです!