英語で経済を理解することを主眼に置いたリーディング教材です。「英語対訳で読む」シリーズの経済入門編になります。
話題の経済知識を日本語と英語で習得
筆者の「日常生活は経済活動と深く結びついているにも関わらず、経済のことに関心がない人が意外に多い」という問題提起を発端に、そのような人々が経済の基礎知識を身に付つけられるようにするというコンセプトの元、本書は執筆されました。
そして、「日本語のニュースとは異なる視点で書かれた海外の経済情報を読み取り、世界経済の動きに敏感になることは全ての社会人にとって役に立つため、英語で書かれた経済ニュースを抵抗なく読めるようになってほしい」との願いから、日本語でも経済用語の記載はありますが、英語の経済用語や文章が主体となっています。
全6章で構成されており、順に「日本経済の基本」、「政治と経済」、「企業と経済」、「金融と経済」、「世界経済」、「日本経済の歴史」となります。
「日銀短観」「プライマリーバランス」「コーポレートガバナンス」、最近発足したトランプ政権の政策で話題の「TPP」など、ニュースでよく目にする経済関連用語を取り上げており、経済に関心が薄い人も興味を持って読み進めることができるのではないでしょうか。
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大島 朋剛『英語対訳で読む「経済」入門』 |
辞書を引かずに学習できるレイアウト
1題ごとに見開きで完結する作りになっています。主題に始まり、本文、日本語訳が掲載されています。
本文ではパラグラフの最初に番号が付されており、合致する日本語訳を容易に見つけやすくするための配慮がなされています。さらに、多くの単語の下には赤色のアンダーラインが引かれ、日本語の意味も記載されており、学習者として辞書を引く煩わしい作業もほとんど無く読み終えることができます。
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大島 朋剛『英語対訳で読む「経済」入門』 |
ただし、基本的な単語や文法には意味が示されていないため、厳密な意味において辞書を引くことなく英文を読むためには、TOEIC500点以上のスコアは必要になるでしょう。
また、市販の赤シートを使えば意味を隠すこともできます(赤シートを使ったうえで英文を辞書なしで読むにはTOEIC800以上は必要)。力試しに、一通り英文を一気に読み、自分で訳文を考え、最終的には対訳と照らし合わせて答えを確認するといった使い方もできるため、TOEICテストのリーディング対策にもなります。
図解のまとめが秀逸
章末では、各章の中にある本題のトピックから重要なものを取り上げ、グラフや図を用いて解説しており、大学で経済の講義を受けているかのような感覚を受けます。
とりわけ、「株式のしくみ」についての解説は株式会社と利害関係者の関係が一目で理解できるだけでなく、英語でも習得できるので、企業と経済の関係を英語でマスターする上で非常に有益な内容だと言えるでしょう。
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大島 朋剛『英語対訳で読む「経済」入門』 |
まとめ
- TPPを含めた話題の経済用語を日本語と英語の両方で学ぶことができます。
- 辞書を引くことなくTOEICのリーディング対策ができます。
- 図を用いた解説で企業と経済の関係を深く理解することができます。
残念ながらCDは付いていませんが、わずか税別762円の本なので仕方がありません。このようにCDがない学習書の場合は、音読を繰り返すことを基本にしてください。実際に英字新聞を読むときももちろんCD等の音源はありませんが、そのような場合でも一度記事を読んだあとに音読は必ずやりましょう。音読を繰り返すことで、英文や語彙が自分のものになります。英語の勉強方法が分からない方はつべこべ言わずに、兎に角ひたすらテキストを音読しましょう。音読さえあれば、高額な英会話スクールなど不要だということがきっと理解できるでしょう(笑)