新形式TOEICテストのパート5、6対策に書かれた本です。
著者の中村澄子氏は、エール大学でMBAを取得し、現在は東京でTOEIC専門の英語教室を主宰している先生です。他にもTOEIC周りの著作が多数あります。
TOEICに出題される鉄板問題をマスターする
2016年5月のTOEICテストの改変を受け、「千本ノック」シリーズもそれに合わせてリニューアルしました。
従来までは年1冊刊行されていましたが、新シリーズでは「絶対落とせない鉄板問題編」「解ければ差が付く良問編」「難問・ひっかけ・トリック問題編」の3分冊となっています。
「絶対落とせない鉄板問題編」は、TOEICスコアが500点前後、またはそれ以下の学習者が600~750点台を取得することを想定して作られた問題集です。
パート5で毎回出題される、品詞問題等の鉄板問題対策用に著者が厳選した問題で構成されており、問題の8割は過去に発売された「千本ノック」シリーズから、残りの2割は新作問題となっています。
解説は従来の「千本ノック」シリーズでは「この選択肢でなければ文意が通りません」、「英字新聞を読み慣れていればわかります」といったように、学習者が知りたいなぜの部分が欠落していました。
しかし、新シリーズでは、選択肢を論理的に解説している箇所が多数あり、学習者の負担を軽減しています。
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中村 澄子『TOEIC LISTENING AND READING TEST 千本ノック!』 |
新旧のテストで変わらない部分を抑えつつ、最新の傾向も反映しているため、掲載されている問題と詳しい解説をしっかりとモノにできれば、目標スコア達成までの期間を早めることができるでしょう。
文挿入問題への対策も強化可能
パート5の問題が大部分を占めますが、パート6の対策ができるようにもなっています。新形式のテストに変更後、多数の新形式対策本が出版されていますが、パート6にスポットを当てた問題集は依然として少ないのが現状です。そのような中、パート6の問題を収載しているこの本は非常に貴重なものとなっています。
特にパート6の目玉は、何といっても旧テストには無かった文挿入問題でしょう。1つの単語を選ぶものとは異なり、時間がかかるため、文を読むスピードの遅い初中級者には手強い問題となります。
どのような流れで答えの選択肢を選ぶかの解説が非常に丁寧であるだけでなく、適当に選択肢を選び先に進むのも得策、といったアドバイスがされている部分は、着実なスコアアップに徹する上でとても参考になるでしょう。
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中村 澄子『TOEIC LISTENING AND READING TEST 千本ノック!』 |
体験記を読んでスコアアップのきっかけを掴む
問題にチャレンジし終わった後には、学習者の体験記を読むことができます。6人分掲載されており、スコアアップまでの経歴も様々です。
中には300点台からスタートした人が、785点まで短期間で大幅にスコアアップしたという記録もあります。現状のスコアはかなり低いが、昇進・昇格や転職のために早期に高得点が必要だという人には貴重なサンプルになるのではないでしょうか。
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中村 澄子『TOEIC LISTENING AND READING TEST 千本ノック!』 |
自分の現状のスコアと目標スコアに照らし合わせて、それに合った体験記を何度も読み、学習を継続するためのモチベーションにする、それがこの体験記の上手な利用方法になります。
まとめ
- 著者が厳選した問題を通じて、鉄板問題に数多く触れることができます。
- 文挿入問題への対処方法がわかります。
- 学習継続のためのモチベーションとなる多数の体験記があります。
東京大学や東京外国語大学の平均的な学部生だとTOEICは700点前後なので、730点~860点というレンジは実は相当英語を勉強していないと獲得できないスコアです。英検に換算すればおおむね準1級で、高校英語教師の大多数と同じくらいの実力ですね。英語とは全く関係のない職業についている社会人が、このスコアを獲得できれば「大したもの」です。