英語と日本語で経済用語を学び、英字経済紙や一般紙の経済分野の記事を読めるようにすることを目的としたリーディング教材です。
The Financial Times や The New York Times などの海外英字紙の英文を題材としています。
経済英語に習熟するためのエッセンスが分かる
大学で経済を学ぶ学生に向けて主に書かれた本になります。経済英語の専門家としての豊富な経験から、学生時代に英語が得意な人でも企業に就職していざ経済分野の話となると理解に乏しいと筆者は序文の冒頭で述べています。
そして、世界のグローバル化が急進展している昨今において、海外情報や知識を翻訳無しで素早く得られるようになってほしいとの思いから出版したと締めくくっています。
経済分野の知識に乏しい学生が、経済英語を習熟するには、英語力よりもまずは経済の知識を豊富にする必要があると持論を展開しており、英語の能力が乏しくてもある程度理解できるが、その逆の場合、習熟が難しいと言います。
経験豊富な著者だからこそ説得力があり、経済英語をこれからマスターしたいと考えていて、英語と経済知識どちらを先に学習するか迷っている学生にとっては、今後の学習において非常に参考になる言葉であり、指針にもなるでしょう。
課題に取り組みやすい構成
各章で取り上げているトピックは経済、特にマクロ経済に関する内容がほとんどです。「サミット」に始まり、「財政と金融」、「株式市場」、「国際収支」、「円安・円高の悲劇」「クリントン大統領の就任」、「欧州連合」などとなっています。
1つの章は、「概要」・「基本用語」・「課題」の順で完結します。「概要」では各章で取り上げたトピックやそれに関する用語の語源などの説明が丁寧に行われています。「基本用語」は課題を理解するためには不可欠な用語です。英単語と日本語の意味のみ掲載されているのではなく、用語の解説も付いており、経済知識が無い人でも「課題」に容易に取り組めるでしょう。
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寺澤 浩二『経済の英語』 |
「課題」は、フィナンシャルタイムズやニューヨークタイムズなど一流英字新聞・雑誌の記事が使用されています。1つの記事が短く区切られており、直後に語注、訳が確認できます。
語注は、専門用語についてはもれなく載っている印象ですが、高校までに習う基本的な単語の意味は省略されている場合が多いです。そのため、TOEICスコアが500点以上あれば読み進めやすいでしょう。
また、「課題」は、一気に読まなくてはならない作りではないため、読んだところまでをチェックしやすいですし、別の章の課題文の続きを読むという使い方もできるのではないでしょうか。
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寺澤 浩二『経済の英語』 |
追加基本用語集でレベルアップ
全ての章の終了後には、「追加基本用語集」という著者がこの本の中で紹介できなかった経済英語を掲載しています。
global warming(地球温暖化)、M&A(企業の買収合併)、non-tariff barrier(非関税障壁)のような日本のニュースでもメジャーな用語から、greenmail(グリーンメール)、poll tax(人頭税)といったあまり聞き慣れないものまであります。
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寺澤 浩二『経済の英語』 |
非常に勉強になり、経済英語を十分にマスターした気になりますが、これだけでは足りないと筆者は言います。
さらなるレベルアップを望むのであれば、英語の専門書や新聞などを継続して読み、わからない用語は自分で調べるなどの地道な努力が必要になると言えるでしょう。
まとめ
- 経済英語を習熟するには、経済知識を第一に理解する必要があります。
- 「概要」と「基本用語」の説明が詳しいので、経済知識に弱くても安心です。
- 追加基本用語集に満足せず、日々学び続ける姿勢が大切です。
1994年発刊のマイナーな本ですが、英字新聞を読むときに避けては通れない経済関連の知識と語彙を習得するのにとても良い本です。出典は Financial Times、The Economist、The Wall Street Journal、The New York Times、TIME といった難しい海外英字紙ばかりですが、英文に極端な難単語は含まれていません(とはいっても、TOEICで言えば軽く800点以上は狙える語彙が使われています)。この本をやりこめば、おおむね The Japan Times の経済金融関連の記事は、辞書を引かなくてもそこそこ読めるようになるはずです。