『世界一わかりやすい英語の発音の授業』は、人気英語講師・関正生氏による発音の参考書です。関氏は予備校講師として長く教壇に立ち、大変分かりやすい独自の説明に定評があります。
発音を学ぶにはどうしたらいいのか
実用的な英語を学ぶうえで、避けて通れないのが発音です。しかし高校までの英語授業では、発音に関して体系的に学ぶ機会はあまりない……というのが実情ではないでしょうか。
発音が正しく理解できなければ、読むことも聞くこともままなりません。なのに、発音やリスニング学習に関しては、「音声を各自でよく確認しなさい」「とにかくたくさん聞きなさい」と言われるばかりだったのではありませんか?どう学んでよいかわからず、苦手意識のある人も多いことでしょう。
![]() |
![]() |
関 正生『世界一わかりやすい英語の発音の授業』 |
英語の発音を分析的に学ぶ
本書はPART1からPART11に分けられていますが、内容を整理すると、以下の3つに集約できます。
1. 英語発音に特徴的な「音」を知る。
2. リスニングを難しく感じさせる要因を知る。
3. つづりと音の関係を知る。
英語の発音に特徴的な「音」を知るためのセクションは、本文のほとんどのボリュームを占めますが、とても平易な言葉を用いて、語りかけるような説明になっています。具体的な発音も、カタカナ表記を交えたり、例えを上手に使ったりしてわかりやすく表現してあります。
![]() |
![]() |
関 正生『世界一わかりやすい英語の発音の授業』 |
リスニングを難しく感じさせる要因の例
①単語と音が一致しない
次にリスニングについてです。リスニングを苦手と感じる人が挙げる理由の一つに、「知っている単語と、その音とが一致しない」ということがあります。
個々の単語についてだけでなく、隣り合った単語の音の連結(リエゾン)によって、音が混じることもその一例でしょう。あるいは、隣り合った音の影響で、飲みこまれたように消えてしまう音もあります。そうした発音のパターンも、この本では細かく具体的に説明しています。
また著者は、「英語の発音には『弱形』と『強形』がある」ということを紹介しています。日本の英語教育において、たとえば「to」は「トゥー」と発音すると習いますが、実際には「タ」と発音されている……などというのがその例です。この『弱形』は辞書にも載っているのですが、そのことを知っている人は少ないでしょう。短く「タ」と発音されている音が実は「to」であることを意識する。そういう作業が、リスニング上達には欠かせないのです。
![]() |
|
関 正生『世界一わかりやすい英語の発音の授業』 |
②速すぎて聞きとれない?
さらに別な例を考えてみましょう。日本語は子音と母音が常にコンビを組んでいますので、ひとつひとつの子音に必ず母音を合わせて発音してしまう傾向があります。たとえば「street」という英単語の母音は一つですが、日本語の発音方式で考えると母音を余分に足し、「ストリート」と長くしてしまうのです。
このように、自分では「ストリート」だと思いこんでいる単語を、ひと息で「street」と発音されるわけですから、「速くて聞きとれない」と感じてしまうのも無理はありません。ですから、発音についてきちんと学ぶと、聞きとる力も上がっていくというわけです。
様々なアドバイスが発音学習の助けになる
なお終盤のPART11では、スペルと音の関係(フォニックスと呼ばれる手法)にも簡単に触れてあります。これを身につけると、英単語の読みが楽になりますし、初めて見る単語でも発音を想像しやすくなります。
![]() |
![]() |
関 正生『世界一わかりやすい英語の発音の授業』 |
読み進めるうち、こうした様々なアドバイスによって、発音の学習がより具体的で身近なものになっていくのが実感できることでしょう。「世界一わかりやすい」というタイトルに違わず、読みやすくわかりやすい内容ですので、中学生以上ならじゅうぶん理解できます。やり直し学習をしたい大人にも、もちろんおすすめです。
まとめ
- 英語の発音について、わかりやすく説明している参考書です。
- 発音について学ぶことで、リスニング力もアップさせることができます。
- 中学生以上なら、じゅうぶん理解できる内容です。
予備校講師らしい分かりやすい解説が特徴的な発音本です。実際に正確な発音が身に付くかどうかはともかくとして、発音の基礎理論を勉強するにはとても良い本ですね。あまりにも日本人っぽいカタカナ発音ではやはり通じませんので、ネイティブスピーカーのような完璧な発音を身に付けるのは難しいにしても、ある程度発音を改善する必要はあります。発音学習はリスニング力の向上にもつながるので、英語学習の中では実はコスパの高い領域です。一度は集中的に勉強することをお勧めします。