『赤毛のアン』『不思議の国のアリス』など、誰もが一度は触れたことのある名作文学を教材とする音読学習書です。原文の美しい英語を味わいながら楽しく学ぶことができます。
音読して楽しくなる英文で学ぼう!
音読学習を続けていた著者の安井京子氏は、ある時「声に出して読むと気分が良くなる英語とならない英語がある」ということに気付いたそうです。文法や単語を覚えるために書かれた教科書や参考書の例文を音読するのと、多くの人に愛される名作の美しい英文を音読するのとでは音読する楽しさが違うのです。
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安井 京子『音読して楽しむ名作英文』 |
掲載されている英文は『赤毛のアン』『不思議の国のアリス』『ハックルベリー・フィンの冒険』など子供向けの物語から、『ジェーン・エア』『賢者の贈り物』『ロミオとジュリエット』など大人向けの物語までさまざまで、バラエティに富んでいます。そのどれもが誰もが一度は触れたことのある有名な作品ばかりです。子供の頃から本を熱心に読んできた文学好きの方には大変嬉しいラインナップといえるでしょう。
美しい英文を楽しむことがポイント
学習方法はとてもシンプルです。まずは英文を黙読します。分からない箇所は単語解説や日本語訳を参考にして、最初に意味をしっかり理解しておきましょう。
次にCDの音声をお手本に繰り返し声に出して読みます。繰り返し音読して楽しいと感じられる英文が選ばれていますので、楽しみながらトレーニングを続けるうちに自然に暗唱できるようになる方もいらっしゃるかもしれません。
ポイントは英語の音の美しさやリズムやイントネーションを楽しむことです。英語の音を体になじませて、それを心地良いと感じられるようになることを目指してみましょう。感情をともなった自分の言葉のように英文を言えるようになるのが理想です。
各セクションの英文は5分程度で音読できる長さになるように作品の一部を抜粋・掲載されています。左ページに英文、右ページに単語の解説と日本語訳という構成になっていますので、意味がつかめない時にその都度、辞書で調べる必要がありません。
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安井 京子『音読して楽しむ名作英文』 |
セクションの始めには物語に関する解説、音読のポイントなどが掲載されています。まだ読んだことのない作品でも、作品背景や内容を知ってから音読学習に進むことができるので、抜粋された文章でも十分楽しみながら学べるでしょう。
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安井 京子『音読して楽しむ名作英文』 |
初心者~中級者には難しめだが物語は楽しめる
学習者向けに簡単な英文に書き直さず、名作の原文をそのまま使っていますので、英語初心者~中級者の方には難しめです。脚注なしで読むなら英検1級、脚注ありでも準1級は必要と思われる内容となっています。
ただ誰もが知っている物語が題材となっているため、分からない単語や表現があっても、ある程度推測しながら読み進めることはできそうです。物語や単語の解説、日本語訳もありますので、知っている物語を楽しみながら学習したい文学好きの方は、ぜひ挑戦してみてください。
平均的な速度で聞き取り易いリスニングCDが付属
ナレーターは男性と女性の両方です。約130語~140語/分となっており、平均的なスピードで音声的には聞き取り易いものでした。ただ、文学作品の朗読なので、TOEICや英検などの検定試験の英文のリスニングに慣れている上級者でも、理解が困難に感じることがあるかもしれません。
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安井 京子『音読して楽しむ名作英文』付属CD(1枚組) |
英語を英語のまま理解するためには、テキストの音読とともにリスニング学習も大切です。また、音読の効果を最大限に得るには、我流ではなく正しい発音で音読しなければいけません。CDを使ってナレーターの発音を良く聴いて、音の記憶をたどって真似をして発声してみましょう。音読やリスニングに慣れてきたら、シャドーイングやリピーティング等もお好みに応じて取り入れてみてください。
もっと音読したくなる!
美しい英文に触れることができるのが本書で学ぶ一番のメリットといえます。また、子供の頃に読んだ物語を原文で読むと子供の頃とは違った新しい発見もあり、楽しみながら学習を続けることができます。
本書で音読を続けるうちに、気に入った作品は最初から最後まで一冊きちんと読んでみたいと思うこともあるでしょう。英語学習への意欲が高まりそうです。
まとめ
- 名作の美しい英文で楽しく音読する。
- 『赤毛のアン』『不思議の国のアリス』など誰もが知っている作品が掲載されている。
- 音読のポイントは英語の音の美しさ、イントネーションやリズムを楽しむこと。
- 感情をともなった自分の言葉のように英文を言えるようになるのが理想。
海外文学の「原文」をそのまま抜粋した学習書は珍しく、かなり貴重な本です。アルク社の対象レベルとして「英検3級から」と書かれていますがデタラメですね(笑)。英検準1級あるいはTOEIC800以上の方でも、語注なしで一字一句理解することは難しいはず。しかし、地味ながら滅茶苦茶良い本ですね。英文小説の入門用としてグッドです。出版社もつまんないTOEICの本ばかり作ってないで、こういう本をもっと作ってほしいですね。編集長お勧め(笑)。