ライティング

【レビュー】即戦力がつく英文ライティング:正しい英文を書くだけでなく論理的な文章を作成するマクロな視点を重視

『即戦力がつく英文ライティング』は、単に「正しい英文を書く」ことにとどまらず、「論理的に長文を書く」ことまでをマスターすることを目的とした英作文の教材です。

即戦力がつく英文ライティング

「論理的な長文」とはいえ、英作文が苦手な方が学習を進めることにもきちんと対応しています。なお、著者の日向清人氏は、NHKビジネス英会話の講師でもあり、慶応大学で英語の教鞭をとっていたこともあります。

英作文の要点をミクロからマクロまで丁寧に解説

構成は3部に分かれており、第1部が1文単位での英作文、第2部がパラグラフ単位での構成、第3部が長文単位での構成の解説となっています。

第1部では文法的・語法的に誤りのない文の書き方のほか、「英語らしいセンテンス」を書くための要点が解説されています。

「英語らしいセンテンス」を書くための要点を解説する第1部
日向 清人『即戦力がつく英文ライティング』

この部分ではよりネイティブらしく、かつ読みやすい英文を作成するためのポイントが無駄なく解説されています。特に日本語と英語の考え方の違いを紹介した上で丁寧な解説がされていますので、1文単位で自然な英語を書くためにはどのようにするかという英作文の基礎を十分すぎるほど学べるでしょう。

特に解説については学習者が持ちやすい疑問点や陥りやすい誤りについてこれでもかというほど論理的な説明を日本語でしてくれますので、まさに「日本語で英語脳を鍛えるため」に書かれた本と言えます。

第2部ではパラグラフ単位の構成、第3部では長文単位の構成と、いよいよある程度の長さを持った論理的な英文を書くためにはどうするかという解説となっています。

以上のように、英文をミクロからマクロへと作成する方法を解説する構成ですから、英作文に苦手意識のある人でも頭から読むことで無理なく学習を進められます。

論理的な英作文は文法や語法・構文を知っているだけでは書けないことを解説

私が常々思っていることですが、英作文の学習書や指導というと、

「文法・語法的な誤りを赤ペンで添削して終わり」
「構文や例文の暗記と理解に終始」

のいずれかのパターンが非常に多いと感じています。

僭越ながら別稿で、パラグラフリーディングというものをご紹介しましたが、本来英作文というものは論理的な文章を書くのが最終目的なわけで、パラグラフごとの関連を意識しながら書く「パラグラフ・ライティング」ともいうべき作業が本来のはずなのに、です。

日本語の論文にしても、「結論は先に示す。説明は大きな概念から入り小さな概念へとより詳細な説明を積み上げていき、最後に結論をもう一度示す」というような基本的な構成はしっかりあり、論理的な文章というものは一定の作成ルールというものがあります。

しかし、英作文の指導の世界では文法や語法が正しいかどうかという、いわばミクロ的な指導に終始し、マクロ的に「英語で論理的な文章を作成する」という指導は少ないように感じています。

本書では第2部、第3部でパラグラフや長文を整える方法が解説されています。私が個人的にマスターして欲しい部分はこちらの部分です。もちろんミクロの視点も非常に大切なのですが、論理構成というマクロの観点も十分意識して学習を進めるには最適な本となっています。

パラグラフを整える方法を解説する第2部
日向 清人『即戦力がつく英文ライティング』

収録されている例文や解説に使用されている英文についてはさほど語彙が難しいものはありませんし、文法知識を固め終わったくらいの初学者でも十分読みこなせます。初学者は文法知識の総復習をしつつ英作文を基礎から学ぶ使い方で、中上級者は論理的な長文を書くための方法を学ぶ使い方で、幅広いレベルに対応できる良書です。

まとめ

  • 英作文の方法をミクロからマクロまで解説したライティングの学習書。
  • 文法、語法といったミクロレベルの知識のみならず、論理的な長文を書けるようになるための方法を解説。
  • 英文法知識を固め終わっていれば、初学者から上級者まで幅広く対応できる。
●編集長からひとこと
日本人だからといって皆日本語の文章が上手いわけではありません。基本的なお作法「起承転結」で日本語の文章を書けず、理解しにくい文章を書くひとも多いのではないでしょうか。同様に英語圏には英語圏のお作法があり、それを学ばなければネイティブスピーカーに通じない英文になってしまいます(日本語とは違い起承転結は×)。「英語圏に通用する文章術」を学べる大変お薦めできる本です。
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さかえ

さかえ

上智大学法学部国際関係法学科卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。『TIME』『Newsweek』は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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