大学受験

元・上智大生 さかえの『東京にある最難関大学・英語入試問題の傾向と対策』

現代の大学入試では英語の配点が高くなっています。国公立大学文系であれば大体の大学で二次試験は英語と国語・数学の配点が同程度ですし、私立大学文系であれば英語に他の科目の1.5倍~2倍程度の配点が割り振られているケースが多くなっています。

大学受験業界では英語を制する者は入試を制するなどという言葉もあるようですが、英語対策を十分に行うことは「人に差をつける」ためではなく、「人に差をつけられないようにする(つまり合格レベルの受験生の大部分は英語ができて当たり前)」という状況になっています。

本記事では、東大・一橋大・早稲田・慶応・上智といった(東京にある)最難関大学とされる5つの大学について、英語の傾向と対策方法を概説します。各大学の詳細についてはこれまでに別記事が本サイトにありますので、そちらをご覧ください。

全大学共通・最低限やっておかなければいけないこと

私は大学入試に限らず資格試験まで含めて試験はスポーツのようなもので、戦略や戦術・技術といったテクニックと、走り込みや筋力トレーニングなどで養う基礎体力は車の両輪でありどちらが欠けてもいけないと考えています。

大学入試に当てはめると、
・テクニック=志望大学の出題傾向の把握と分析・解答方法の検討と習得
・基礎体力=基本知識の習得
という関係です。

いくら志望大学の出題傾向を分析しても、基本知識が欠けていれば絶対に合格することはできません。分析した出題傾向と考えた対策を活かすためには基本知識の習得は欠かせません。

英語に関して基本知識の習得で最低限必要なレベルを提示した記事を以前書いております。まずは落ち着いてこの80%くらいはマスターして、じっくり基礎体力を身につけてから各大学に照準を絞った勉強をするようにしてください。結局はそれが最短ルートです。

では、各大学の傾向と対策について概説していきます。

東京大学の傾向と対策

東大の英語は読解問題・英作文・リスニング・文法・語法まで、大学入試の英語問題の総ざらいのような出題形式で安定しています。

各問題で出題される英文では単語や熟語について受験生レベルでは見たこともないだろうと思われるようなものが解答のキーになることはまずありません。

東大英語の出題を見ると最も重視されているのは論理の把握力、前後の文脈の推理力、そして把握したものを的確かつ論理的に表現できる構成力が総合的に問われています。

最難関大学とされる大学では全大学で共通なのですが、日常学習の問題練習のときから、しっかりと根拠をもって問題を解くということが基本姿勢として重要です。

長文読解問題の練習をする際も、何となく文章を読んで選択肢を見て、何となくこれだからこれ、という解き方では東大の英語は通用しません。

しっかりと「長文のここの文脈に書いてあるから(=リスニングの問題読み上げで言っていたから)この選択肢である、この文章である」といった解き方を普段から行うようにします。

東大は長文を英語で要約させる問題が出題されるのが定石ですから、長文読解問題を解いたら、その問題で問われていなくても要約文を作るといった練習をしておくとより良いでしょう。

パラグラフリーディングの解説記事でも言いましたが、各段落の内容メモを作り、それをつなぎ合わせて要約をし、自分が作成した要約文が「人に見せた時に」きちんと文章の意味を十分に伝えられるのかどうか、そういった客観的な視点で自分の表現力を見る癖をつけるようにしてください。

これは要約問題だけではなく、東大でよく出題される図を見て説明する、意見を述べるなどの自由英作文問題にも役立つ方法です。

一橋大学の傾向と対策

一橋大学は元々が経済系の大学であることも影響しているのでしょうか、東大と傾向は似ているのですが、小説文がほとんど出題されないという違いがあります。

長文読解は論説・エッセイが中心となり、しかも試験近辺で起こった事件などを題材にしたいわゆる時事問題が多く出題される傾向です。

さらに自由英作文、それも100~150語程度の大学受験レベルとしては比較的長い文章を書く問題が出題されます。

出題される難易度としては語彙レベルが東大に比較すると若干難しい単語が混じることもあり、しかもそれが解答のキーセンテンスに含まれているような場合もありますから、英単語・英熟語の勉強はできるだけ手を抜かないでいただきたいところです。

また、時事問題が多く出題されますから、最新のニュースはできる限り触れておきましょう。負担が大きければ新聞をじっくり読むなどではなく、朝食や夕食などの時にニュース番組をみるようにするだけでも十分なレベルですので、あまり時事問題、時事問題と目を血走らせないように。

基本的な対策として東大と異なる注意すべき点としてはこの程度ですが、自由英作文に対する考え方だけは要注意です。

一橋の自由英作文はいくつかのテーマから1つを選んでそれについて述べるという形式が多いのですが、この問題で聞かれていることは「そのテーマについてどれだけ知っているか」ということではありません。

「どれだけ論理的に、かつ間違いのない英語で考えを述べられるか」という部分が見られているわけですから、知識をひけらかすような解答方法をすべきではありません。そもそも受験生の知っているレベルの知識なんか採点者や出題者なら皆知っています。

それよりも文章全体の構成に注意して、論理的に破たんしていない文章を、間違えが少ないようにできるだけオーソドックスな構文と基本的な語句で英作文を行うような考え方をしてください。

この自由英作文対策としても、東大のところで解説した「長文読解問題を解いたら英語で要約文を作り、それを他の人に見せて意味がきちんと分かりやすく伝わるか」というチェック方法が役に立ちます。というより、

これ以外の練習方法はほとんどないと言って良いでしょう。

早稲田大学の傾向と対策

早稲田の場合(慶応もそうですが)、傾向分析よりも大切なことは「あふれかえる受験情報やネット記事などに踊らされないこと」でしょうか(笑)

受験者数が多いマンモス校ですから受験生も莫大な数になりますので、はっきり言って大小問わず早稲田・慶応の受験生というのは予備校の稼ぎどころなのです。

そのため英語に関しても様々な情報が飛び交います。

例えば、
「早稲田は超人的な速読力が必要だ。ウォー!」
といった状況に陥っている受験生を何人も見てきましたが、超人的な速読力とは受験生レベルで言えばびっしり書かれた英文5ページを1分で読み切ってしかも全部問題を解いてしまえるといったレベルです。

そんな超人的な能力がないと合格できない大学なんて世界中どこを探してもありません。

他にも、
「超長文は斜め読みだ、そうでないと間に合わないぞ」
という先生や予備校もあるようですが、それは長文読解の本質が全く分かっていません。

パラグラフリーディングの記事でも書きましたが、要求されるペースで淡々と問題を読んで、1回で文意をつかむことができればきちんと時間内に全問解答できる問題ばかりです。

早稲田・慶応を受ける方は、アヤシイ受験情報に惑わされず淡々と勉強を続けることを意識してください。

さて、早稲田の傾向は出題形式が学部ごとにかなり変わりますので一言で言うのは難しいものがありますから、早稲田の傾向を詳細に記述した記事の方をご覧ください。

ただ、一言で言うならば語彙レベルは東大や一橋大などの国公立大学に比べて難しいものが出題されますので、論理的思考力は当然としても、知識の量を問われるウエイトがより高くなる傾向があります。文法問題や英作文問題に関しても同様で、微妙な前置詞の使い方といったやや細かい文法知識などを綿密に勉強しておく必要があると言えます。

長文読解問題については超人的な速読力が必要とされるわけでは絶対にありませんが、それでも大学受験レベルとしては最長レベルの英文が出題されます。日常から問題を解ければ良しとせず、問題自体は全て答えられていたとしても、きちんと英文を読みこなせていたかのチェックをする癖をつける、これは東大や一橋に限らず全大学共通です。

後は自分の志望する学部の過去問をできるだけ多く集めて問題に慣れておく、その次にできれば慶応や上智などの他の難関私立大学の、傾向の似た学部の過去問も解いておくということまでできれば十分でしょう。

慶応大学の傾向と対策

慶応大学については早稲田以上に学部ごとの出題傾向が違うという印象です。

長文読解問題はやはり大学受験で最長レベル、また内容もかなり難しい英文が出題されますが、これもパラグラフリーディングなどの英文全体の論理構成をつかむ練習+音読程度の英文読解スピードというマクロとミクロの両面からの対策を行っておけば全く問題なく対応できるはずです。

長文読解問題は文系学部では受験生レベルではかなり長い文章が出題されることが多いので、あまり最初から自分の志望学部の過去問にこだわらなくても良いでしょう。医学部などの理系学部の長文読解問題は比較的短く、かつ論理構成もストレートで分かりやすい文章が出題されていますから、慶応長文対策のはじめとしてはここからスタートして、その後に志望学部の問題をやるという方針が良いでしょう。

文法・語法問題はほぼ全学部で出題されますが、商学部では特にほぼ毎年出題されています。そのため商学部の問題はどの学部を受けるとしても慶応英語対策のはじめの一歩としてマスターしておくと効率的です。

後はやはり基礎体力の問題ですが、早稲田同様に難易度の高い単語も出題されますから、市販の単語集は(大学受験系の)最高レベルのものまで一冊しっかりマスター、その後に早稲田、上智といった同程度の難易度の大学の長文問題にも当たって音読するなどして、語彙力も十分に高めておくようにしましょう。

上智大学の傾向と対策

上智大学の英語は難しいというイメージがありますが、こと問題の難易度と言うことに関して言えば早稲田や慶応よりもかなり取り組みやすい問題が出題されます。

特に上智英語は大量の問題が出題されて、普通の受験生であれば時間内に全問解答できるわけがないというようなことを言われますが、そんなことはありません。

私は上智大学法学部出身で、国際関係法学科と法律学科の2つを受けて2つとも合格しましたが、音読のスピードで問題を読んで落ち着いて全問題を解答し終えても、制限時間を30分ほど残していたので、後は寝ていました(笑)

上智の英語は大問1つ当たりの英文量は早稲田・慶応に比べて短い場合があっても、大問の数自体が多くトータルで読まなければならない英語の量はこれらの大学に比べて多い場合がありますが、論理構成がごちゃごちゃで把握することが難しい英文はまず出題されません。

一言で言うと文章は長く単語・熟語も難しいものが混じるけれど、読みやすい文章が出題される大学です。

そのため、基礎体力にあたる語彙力養成や基本的な読解力の養成をきちんとしていれば長文問題に関して手も足も出ないなんてことはありません。しっかり勉強してきた受験生であれば、「あれ、こんな簡単で良いのか?」と逆に不安になるくらいのレベルです(笑)

文法・語法問題に関してもオーソドックスですから、早稲田や慶応の文法問題に対応できる受験生なら問題ないでしょう。

上智英語の本当の難しさは、学部ごとの傾向がある程度固定されている早稲田や慶応と違って、年度によって出題形式ががらりと変わるということです。

そのため、例えば法学部志望だからと法学部の過去5年分の過去問研究だけして本番に臨んだら見たこともない問題形式の出題がされて、実力が出し切れなかったということが往々にして起こります。

上智志望者は、志望学部だけではなく他の学部の過去問もできるだけ解き、どんな形式で出題されても対応できるようにしておいてください。

そこまでやっておけば大丈夫です。問題形式が変わっても内容自体は基本的にオーソドックスですから(笑)

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さかえ

さかえ

上智大学法学部国際関係法学科卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。『TIME』『Newsweek』は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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