「英会話ができない」のは日本人あるある?
「中学・高校と6年間も英語の勉強で苦労してきた割に、英会話はまるでダメ…」というのはよく聞く話ですね。日本人は「I can’t speak English.(私は英語が話せません)」だけは流暢に言える、という笑い話もあるくらいです。
そんな状況を打破しようと、文部科学省は近年、英語教育において4技能(読む・聞く・話す・書く)をバランスよく育成するという方針を打ち出しました。確かに、ひと昔前に比べれば授業で音声教材利用の度合いが増えたり、テキストにも口語的な表現を多く取り入れたりという変化はあるようです。しかし、私の職場である学習塾での様子を見る限り、そう簡単に4技能のスキルアップができるかといえば、「難しいだろうな…」というのが実情です。
英語の苦手な人はどこでつまずいているのか
塾にやってくる英語の苦手な生徒たちは、中学1年生のレベルでつまずいていることがほとんどです。たとえば小学校で習ったローマ字と、フォニックス(英単語のつづりと発音の法則)を混同してしまい、単語を読むことができない。あるいは、主語とは何か、人称とは何かがわかっていない。語順の重要性がわからない。…現状を見る限り、学校ではこうした部分までていねいに扱うゆとりはないのだろうと感じます。
こんな状態で、やれ受動態だの完了形だの、関係代名詞だのを学習しても、理解するのは難しいはず。そこに4技能重視と言われても、できる子とできない子の格差がさらに広がるだけでは…と私は危惧しています。わからないから嫌いになる、嫌いだからやる気を失う、そしてもっとわからなくなる。悪循環です。
中1~中2レベルを徹底的に学ぶ
ならば実践的なスキル獲得のために、最低限何をしたらいいのでしょう。そうたずねられたら、「フォニックスと、現在の中1~中2レベルの文法をきっちり学ぶべき」というのが私の意見です。関係代名詞(中3レベル)などややこしい文法はバッサリ省いてでも、まずフォニックスを学んで、英単語を読み、発音できる下地を作る。そのうえで基本的な単語の意味と、語順など文法の基本中の基本を徹底する。そうしたプロセスをもっと大切にすべきです。中学英語で習う文法事項はもっと少なく、簡単にしたほうがいい、と私は真剣に思っています。それが結果的に、全体的なスキルの底上げにつながる、と考えるからです。
中1レベルの基礎が理解できていなければ、その後の学習は非常に苦労する…私の経験上からの確信です。現役の中高生だけでなく、大人が英会話学習をやり直しするにも、この中学1~2年生レベルを重点的に復習することをおすすめします。
言いたいことをシンプルに伝えるのなら、中学1~2年レベルの文法で十分。このレベルの基本文を音読し、暗記し、瞬間英作文の要領で日本語と英語の変換が“自動化”されるまでトレーニングする。それだけで、定型的な簡単な会話なら確実にできるようになります。それをクリアして、さらにステップアップしたいと思うなら、中3~高校英語のレベルまで学習をすすめればよいのです。学習を積み重ねていけば、やがて語彙も増え、より自然な会話ができるようになるでしょう。
英会話上達への心がまえ
最近は口語表現重視で、ネイティブっぽい、こなれたイディオムが中学の教科書にも多く載るようになりましたが、そういった内容は後回しでもいいのではないでしょうか。それよりも、主語と動詞を意識し瞬時に言えることのほうが、実際の会話の場面ではずっと役に立ちます。
たとえ帰国子女のような流暢さがなくても、適切な単語を、適切な順序と発音で口に出せれば、コミュニケーションは成立します。変にネイティブスピーカー風にペラペラとしゃべってみても、間違った発音や、支離滅裂な語順、聞き取りづらいスピードでは逆効果。むしろ一語一語慎重に話したほうが、相手も注意深く聞いてくれるはずです。
欲張って難しいことに手を出すより、簡単なトレーニングを何度もくり返し行う…英会話力をつけるなら、そのほうがずっといいです。「英語は実技科目」と意識して、身体で覚えるつもりで取り組めば、きっとよい結果が出ることでしょう。