『”スピーキング”のための音読総演習』は、パワー音読という英語学習方法を指導している学習書です。
詳細については割愛しますが、パワー音読とは著者である横山カズ氏が提唱している「音読によって英語を自在に話せるようになる」ための学習方法を指します。
音読による学習のステップを詳しく解説
別の記事でも何度も書いているように、私は英語学習で最も効率的な方法は遠回りのように見えても音読を続けることだと考えています。その一方で、音読について詳しく、効率的なやり方を指導している本はあまりないという印象も持っています。事実、私も大学生の頃に我流になりすぎて伸び悩んだ経験があります。
パワー音読についてあまり詳しく紹介してしまうとネタバレになってしまうため詳細は省略しますが、この本の目的は「シンプルな構文の音読練習をすることで、自分の考えていることや思っていることを素直に英語で表現できるようになること」と言えます。
英語と日本語の違いを理解し、読み・話し・聞くことができる基礎固めをする
英語と日本語にはたくさんの違いがあります。日本人が英語を中々得意になれない理由の一つが、この違いにあります。
たとえば文法では、基本的に日本語は動詞が最後に来る(そのため、最後まで読まないと分かりにくい)のに対し、英語は基本的に動詞が名詞の次、つまり一文のかなり最初の方に来る(そのため、文の最初でおおよその内容は示されている)という違いです。
また、発音では日本語は基本的に「高い、低い」はあっても強弱のメリハリはあまりない平坦な発音、英語は強弱のメリハリが強く、音便(リエゾン)等で発音されないような場合すらあるという点が異なります。
息継ぎや話しているときの一文の途中での切り方も、英語が母語ではない我々には分かりにくいところですから、本格的に英語を音読して勉強する前にそういった基礎を固めておくことは、勉強が進んだ段階で方向性を修正する必要が生じないようにするために大きな意義があります。
パワー音読のステップを踏みつつ音読の基礎練習をすることで、こういった違いを十分理解し、英語で話す基礎固めができる内容になっています。
「話す」際の英語の基礎固めにも適している
英語の学習がある程度進んで「読む」「聞く」ことはある程度できるようになった、しかし「話す」ということになると一応話はできるけれど、どうも物切れの文章しか口から出ていない気がするという経験はないでしょうか。
スピーチにおいてはあまり一文を長くし過ぎない方がオーディエンスにわかりやすいから良いのですが、かといってあまり短い文章だけ話しても、これも分かりにくいものです。
自分の言いたいことをよどみなく伝えるためには、話をつなげることもできなければいけません。特にやや複雑なことや込み入ったことを伝える場合はその必要性は高まります。
本書ではそのように、「多少英語が話せる人」が「より複雑な構文もスラスラ話せるようにする」訓練も含まれています。
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横山カズ『”スピーキング”のための音読総演習』 |
その他、場面を選ばず使える「万能例文」と名付けられた文章も収録されていますから、スピーキングの基礎を作るためにも役に立つでしょう。
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横山カズ『”スピーキング”のための音読総演習』 |
「話す」ことが苦手と感じている人に特におすすめ
日本人は特に英語を「読む」ことはできても、「聞く」「話す」は苦手な傾向があります。自分の考えや思いを英語で表現するためのヒントはたくさんちりばめられていますから、スピーキングが苦手な人に特におすすめです。
また、語彙力や読解力をつけることを主眼とした本ではありませんから、収録されている英文は驚くほど平易なものばかりです。そのため、これから本格的に英語を勉強する方が、音読のやり方を間違わないためのガイドとして使うことも有用でしょう。
なお、語彙や文章の難易度自体は高いものではありませんから、TOEICスコアや英検のレベルに合わせた適正レベルといったものはないと考えられます。あくまで英語を話せるようになるためにはどのような頭の使い方をし、どのような訓練をしたらよいのかということを紹介した本であると割り切って使うことが良いでしょう。
まとめ
- 「パワー音読」を提唱する横山カズ氏による音読実践方法を紹介したスピーキング用教材。
- 英語を「話す」ことに苦手意識を持っている方におすすめ。
- 本格的に英語を音読で勉強するためのガイドとしても有用。
- 語彙や読解力の習得を目的とした本ではないので、適正レベルは特にない。悩んだら使うタイプの本。