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【レビュー】ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでTOEICテストでぐんぐん得点アップする方法:アメリカの一流経済紙の英文を素材としたTOEIC Part7専用の演習本

『ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでTOEICテストでぐんぐん得点アップする方法』は、タイトル通りアメリカの一流経済紙を題材にTOEICのPart7、リーディングセクション対策を行うための問題集です。

ウォールストリートジャーナルを読んでTOEIC

収録されている記事はウォール・ストリート・ジャーナルだけではなくダウ・ジョーンズ経済通信など、本格的な経済・金融紙のものとなっています。

TOEICリーディングセクション対策をハイレベルかつ実践的に実現

構成はオーソドックスなもので、第一章でTOEICリーディングセクションの問題を出題形式や解答方法ごとに分類、第二章で厳選された練習問題、第三章で実際の記事だけを読む読解練習となっています。

TOEICのリーディング問題を出題形式や解凍方法別に分類した第1章
中村 澄子『ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでTOEICテストでぐんぐん得点アップする方法』

第一章では出題形式が必要十分な量だけ、詳しく解説されています。TOEICの読解問題では出題形式はある程度限られていますから、ここで解説されている問題形式に対応できれば解答方法に戸惑うことはないでしょう。

第二章以降が本格的な問題練習ですが、解答するまでや読み終わるまでの制限時間が各設問・各記事に記載されています。

制限時間を付けて本格的な問題演習が行える第2章
中村 澄子『ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでTOEICテストでぐんぐん得点アップする方法』

私の感覚ですが、この制限時間はTOEICの全問題を十分時間の余裕をもって解き終わり、さらにスコア900~950程度が十分に取れるレベルを前提に設定されていると感じられます。

記事は実際のウォール・ストリート・ジャーナルなどのものをそのまま収録しており、学習者向けに改編した形跡は見当たりませんから、内容に手加減はありません。そのためあまりこの制限時間を意識しすぎると挫折したり、真正面から記事を読んで読解力自体をアップさせることを放棄してテクニックに走ってしまったりという危険があります。対象読者は、おおむねTOEIC700前半以上を取得済みであることを想定していると思われますので、この制限時間はあくまで最終目標であると考えておいて良いでしょう。

経済紙の購読に慣れるための準備として

実際にウォール・ストリート・ジャーナルやThe Economistを購読して定期的に読んで内容もしっかり理解できるレベルに到達することが、多くの社会人英語学習者の目標や憧れであることは事実です。しかし、TOEICのスコアが800以上のいわゆる「英語は上級者」と言われる人たちでも、これらの経済紙や金融紙を読みこなせない人はたくさんおられます。

TOEICテストでは実際の経済紙ほどの長い論説や社説、記事などは出題されず、ある意味エッセンスを抜粋して学習者向けに加工された程度の長さ・内容しか出題されないからです。

このため、TOEICテストは英語の勉強+解答するためのテクニックの習得だけでも、そこそこのスコアは取れてしまうという状況になっています。いわゆる「履歴書に書かれているTOEICスコアは高いけれど、実務をやらせてみると使えない」というタイプの人がいる理由がこれです。

経済紙を読めたからと言ってそれだけで実務で有能だというわけではありませんが、少なくとも実際に要求される実力を測る一つの指標にはなります。

単なるテストの得点稼ぎのための勉強から実際の経済紙へステップアップする前の前段階として、本書である程度短く抜粋された記事に触れておくことは、ステップアップ後の挫折を防ぐという意味でも、本当に経済紙を購読することが自分に必要なのかということを勉強しながら考えるという意味でも有用です。

適正レベルはTOEICスコア700以上が目安だが、ある程度の経済知識も欲しい

ウォール・ストリート・ジャーナルなどの本格的な経済紙を読む目安としては、私はTOEICスコア700(できれば800)以上が目安であると考えています。これ位のレベルであれば少なくともある程度辞書などを併用すれば字面を追って意味を取ることは可能だからです。

しかし、以下のとおり「エンジェル投資家」などの言葉が当たり前に知っているものとして記載されているので、内容について手加減がない以上はある程度の経済知識も欲しいところです。

経済紙を読むための基礎的な経済知識も要求される英文
中村 澄子『ウォール・ストリート・ジャーナルを読んでTOEICテストでぐんぐん得点アップする方法』

英字の経済紙購読も、英語でビジネスをすることもそうなのですが、日本語での知識や教養の吸収というものも並行して行う必要があります。

特に経済事象については因果関係の分析ができなければいくらニュースや解説を読んでも、次々にテレビで放送されたりネットで紹介されたりするようなダイエット方法のように、あちらこちらと振り回されるだけです。そのため、本書に取り組むのであれば英語の適正レベルがあることは当然として、ある程度経済学の知識も身につけておかないと内容を完全に理解しながらついていくことは難しいでしょう。

私が後輩に良く言うことがあります。

「英語の勉強だけではいけません。社会人なら並行して日経キーワードや日本経済時事ドリル程度は最低限やっておく必要があります。それに加えて経済学の入門書くらいは読んでおいていただきたいところです。」(どの本をおススメするかは記事の本筋ではないので省略しますが…)

そういった意味で、今まで勉強してきた英語力を実践レベルに引き上げるための準備として非常に使える書籍になっています。本文の中でオンライン語学学習システムである”Business English Pro”の紹介もされていますから、併せて使ってみるのも良いでしょう(月額料金は別途かかりますが…)。

まとめ

  • TOEICのリーディング対策をウォール・ストリート・ジャーナルなどの記事を通じて行うリーディング教材。
  • リーディングセクションの問題形式を十分解説しており、解法のマスターとしても使える。
  • 記事の内容は本格的な経済紙をそのまま抜粋しているので、ある程度の経済の基本知識は必要。
  • 単にTOEICのスコアを上げるための勉強だけではなく、実践レベルの学習準備も並行して行いたい人向け。
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さかえ

さかえ

上智大学法学部国際関係法学科卒のビジネスマン。大学在学中は、純正日本人でありながら帰国子女率80%の上級英語クラスに所属していた。『TIME』『Newsweek』は辞書なしで読解可能。愛読誌は『The Wall Street Journal』『The Economist』。 詳しいプロフィール / 記事一覧

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