冒険物語を読みながら、そのストーリーにちりばめられた中学~高校レベルの重要構文・イディオムを学べる参考書です。マンガ風イラストを多く用いて、ストーリーをよりイメージしやすくしています。「多読学習に興味があるけれど、いきなりペーパーバックでは不安…」という人にも安心な、全訳・解説つきストーリーです。
冒険物語を中心に、文法を学べる学習書
『ストーリーで学ぶ英文法』は、語学書を多数出版しているDHCから刊行されています。著者の森田勝之氏は河合塾の専任講師の経験があり、本書のほかにもTOEFL・TOEIC関連や『ボトムアップ式映画英語のリスニング』シリーズなど、さまざまな著作があります。
【レビュー】ボトムアップ式 映画英語のリスニング:細部の音の聞き取りを積み上げて全体を理解する
この本は、主人公の女性・ルリが、ふとしたことから手に入れた古地図を片手に、単身アメリカに渡る…という、冒険要素をもったショートストーリーがベースです。その物語を味わいながら、文法事項も学べるというつくりになっています。
物語・解説・イディオムの3部構成
本文はPART1からPART3までの3部構成です。全体のボリュームとしては200ページほどですが、そのうちPART1(物語のパート)は50ページほどです。
見開き右ページはマンガ風イラストになっていますので、文字のページは正味その半分。それほど長いストーリーではありません。1ページあたりの字数も100~180ワード程度です。全文和訳はストーリーの最後にまとめて載っています。
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森田 勝之『ストーリーで学ぶ英文法』 |
PART2は本文内で出てきた重要構文の解説です。「主語を見抜く」「補語・目的語を見抜く」など、読解に必要なポイントを絞って解説を加え、例文を掲載しています。重要度が高い項目には練習問題もついています。
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森田 勝之『ストーリーで学ぶ英文法』 |
PART3は重要イディオムをまとめた章です。本文からの抜粋と、意味の解説、例文および練習問題が掲載されています。
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森田 勝之『ストーリーで学ぶ英文法』 |
中学英語で楽しむ冒険ストーリー?
表紙には「マンガで学ぶやり直し英文法!」「中学英語で楽しむ冒険ストーリー!」というキャッチコピーがあるので、一見簡単そうなイメージを持つかもしれません。しかし本文を読んでみると、中学英語では習わないようなイディオムや構文があちこちに出てきます。たとえば関係詞や仮定法、使役構文や原形不定詞など、高校レベルの内容が含まれているのです。
PART1のページ内には、こうしたイディオムや構文についての詳しい説明がなく(難しい語句や大意の記載はありますが)、意味を正確に読みとろうと思うと、全文訳もしくはPART2以降、後半の解説ページを参照するしかありません。その都度、後ろのほうを見ないといけないのは不便な感じがします。なぜわざわざこんなつくりになっているのでしょう??
文法の基礎がきちんと身についているか、確認するために読む
この本では、「新しい文法事項を学びながら読む」というよりは、「内容を推測しながらとにかく読む」あるいは「理解しているかどうかを確認するために読む」という使い方のほうがよさそうだと感じました。「中学英語で~」とうたっていますが、中学生や英検3級レベルの学習者だと、ストーリーを楽しむにはやや苦労しそうです。
英検準2級~2級くらいであれば、難解なところがあっても飛ばし読みしながら、ストーリーを追うことができるはず。そして意味のとりにくいところがあったなら、後半の解説でチェックしてみる。そういう使い方がよいのではないでしょうか。
中学~高校の文法事項をひと通り勉強した人が、それがきちんと身についているか確認するのによい本です。これがすらすら読めて楽しめれば、それだけの力がついている、という自信を持つことができるでしょう。
まとめ
- 冒険物語をベースに、英語構文や重要イディオムを学べる学習書です。
- 物語のパートと、解説・イディオムパートとを分けた構成になっています。
- 英検準2級~2級程度の学習者が、自分の文法知識の定着度合いを見るのに使えそうです。
DHC社は化粧品や健康食品で有名ですが、実はこのような英語の参考書も結構たくさん出版している会社です。もともとDHCという社名の由来は「大学翻訳センター(Daigaku Honyaku Center)」で、創業当初は洋書の翻訳事業をしていたそうです。語学関連の事業もやっているのは、そういった関連なのかもしれませんね(ヘリコプター事業をやったりお酒も作っていたりする変わった会社です(笑))。