「単語」は英語学習の上で非常に大事な分野です。しかし、「熟語」の重要性がイマイチ分からず、熟語の勉強は後回しにしてしまっている学習者は意外といるのではないでしょうか。
覚えたところで他の熟語と混同してしまったり、前置詞に振り回されたりして「コストパフォーマンスが悪いから!」と敬遠されてしまうこともしばしばです。
ただ、熟語が試験などで問われることは往々にしてあります。長文読解や英文和訳で、「熟語の意味を正確に把握できないと正答にたどり着けない」問題や、文法の穴抜きの問題など、「知っておかないと突破できない場面」で得点の明暗が分かれることもあります。
今回紹介する『解体英熟語』は単語帳出版に強いZ会出版謹製です。
もし私がまた大学受験生になるなら必ず購入したいなと思う仕上がりになっており、(何なら、現時点で本気で購入を検討しています(笑))これから大学受験を迎える方にはぜひ活用を検討してほしいです。
「熟語学習者ファースト」な、親切設計!
『解体英熟語』の構成は本冊557ページ+巻末付録が127ページとなっています。
大きさは新書が約4冊分重ねた程度、大学受験向け単語帳の部類ではやや大きめ・やや重めの印象です。イディオム対策本と捉えると英熟語特化の本とはいえ、小さめともいえます。
原則として奇数ページは『問題集ページ』で、大学入試問題で出題された、英熟語を含む問題が4題掲載されています(下記画像左側)。
このページはあえて余白を多めに作ってあり、書き込みが可能になっています。1ページに4つ、という割合はこの手の単語・熟語帳の中ではかなり「ゆとり」がある作りになっているので、字が大きくて読みやすいです。
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風早 寛『解体英熟語』 |
偶数ページは『参考書ページ』で前ページの問題の解答が掲載されています(上記画像右側)。
この偶数ページも秀逸で、その熟語を学習する上で知っていて欲しいこと・関連語・暗記のヒントなどの情報がまとめられています。これをもとに学習を進めていけばイディオムを着実に増強していくことができそうです。
画期的なのは各熟語にコードや色分けがついています。「熟語の造りの型」「前置詞・副詞の機能別」「意味」「出題頻度」「多義語であるか」など、さまざまな観点での分類を採用しています。
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風早 寛『解体英熟語』 |
学習者がどの視点で学習を進めても不便がないようにきめ細かな配慮がなされています。巻頭に学習の進め方の提案が複数例掲載されているあたり、さすが自学自習スタイルをサポートする「Z会」といったところでしょうか。
本冊末のIndexも赤シート対応でスピーディーな復習に対応可能となっていて、無駄の無さを感じさせます。
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風早 寛『解体英熟語』 |
また前置詞整理ノートという珍しい項目があり、前置詞・副詞・慣用表現を機能別に整理できるよう手厚いサポートがなされています。
サブノートも上手に活用して、自分が使いやすい・覚えやすいようにカスタマイズできる余裕も魅力です。
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風早 寛『解体英熟語』 |
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風早 寛『解体英熟語』 |
巻末付録の冊子は取り外し可能です。本冊の例題英文とその日本語訳が見開きかつ赤シート対応で記載されています。
1周やり終えた学習者が普段携帯するにも邪魔になりませんし、英作文の練習題材にも使えます。
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風早 寛『解体英熟語』 |
熟語嫌いな全ての受験生へ
『解体英熟語』は、熟語関係でよく点数を落としてしまう大学受験生にはぜひおすすめしたいです。取り扱っている題材も大学入試問題ですから、点数アップに即効性が期待できます。
『システム英単語』のように色味が少ない単語帳が好みの人には「沢山マークや色が出てくる…」と食傷気味になってしまう可能性はありますが、大学受験を控えている学生さんは一度活用を検討してみる価値は大いにあるでしょう。
また、英語がかつて平均以上には得意だった社会人の方が学び直す上で使用するのも私はアリだと思います。扱っている題材がセンター試験レベル以上だということを留意して検討してください。 『速読英熟語』は文脈主義で大学入試必須の語彙を習得することを提唱する教材の代表、Z会の速読英単語シリーズの熟語版の参考書です。 英熟語の習得だけではなく、語法問題対策にも効果大 タイトルは『速読英熟語 ... 続きを見る
あわせて読みたい【レビュー】速読英熟語:長文読解を通して「熟語・構文」を大量に覚える文脈主義型教材
まとめ
- センター試験レベル以上の英熟語を、大学入試問題を通じてマスターを目指す教材です。
- 奇数ページは問題集、偶数ページは参考書形式で、イディオムを細かく分類した独特なスタイルで、様々な視点で学習に取り組めます。
- 赤シート、前置詞整理ノート、巻末例文集も駆使すればより効率的な学習も可能です。
編集長からひとこと
『速読英単語』と同じ風早寛氏の著作です。同じZ会の『速読英熟語』とはかなり趣が違う熟語集ですね。『解体英熟語』は穴埋め問題で覚えさせるタイプなので、「読めば理解できるけど書けない」熟語を減らせます。『速読英熟語』でザックリと大量の熟語を「読める」レベルで覚えた後、『解体英熟語』で「書ける」レベルに仕上げるという使い方が良いのではないでしょうか。大学生や社会人にもお薦めできる逸品です。