『ゼロからスタートシャドーイング(ゼロからスタートシリーズ)』は、「シャドーイング」という学習法で総合的な英語力を身につけることを目的とした英語教材です。
シャドーイングとは、聞こえてくる英語の音声を「shadow(影)」のように後から追いかけるように口に出して発音するトレーニング方法のことで、聞こえた音声をそのまま少し遅れて復唱します。
シャドーイングを続けることで(本書では、毎日10分以上おこなうことを推奨しています)、英語を話す筋肉が鍛えられてスピーキング力が向上するだけでなく、正確に英語の音を聞き分ける能力も身につき、リスニング力の向上も期待できます。
姉妹本としては、同じシリーズの『ゼロからスタートディクテーション』があります。こちらは英語の音声を聞いて書きおこす「ディクテーション」というトレーニング方法で英語力の向上(主にリスニング)を目指す内容となっています。
本書が推奨するシャドーイングの練習方法
まずはテキストを見ずに付属のCDを聞きながら音声を追いかけるように声に出します。これを2回繰り返します。
次に、テキストを見ながらシャドーイングはおこなわずにCDをじっくり聴きます。英文がどのように読まれているのか分析し、アクセントやポーズの場所にチェックを入れます。
そして再度テキストを見ずにシャドーイングの練習をおこないます。できるようになるまで何度も繰り返します。完璧にシャドーイングができるようになるまで次のユニットには進みません。繰り返し練習することが重要です。毎日10分以上、コツコツと続けることで成果が現れます。
単語のシャドーイングから始めて、ニュース英語に挑戦!
本書は5部構成となっており、第1部の「単語シャドーイング」から第5部の「VOA生録英語シャドーイング」に進むにつれて、難易度が高くなっていきます。
第1部の「単語シャドーイング」は、「数字」「果物・野菜・植物」「レストラン」「政治」「経済」などのテーマごとに分かれており、関連した単語を数語並べた文章をシャドーイングしていきます。シャドーイングに慣れるためのウォーミングアップです。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』 |
第2部は「センテンスシャドーイング」です。各ユニットは「単純現在」「受動態」「仮定法」など文法項目別となっています。文法や語彙の解説もついていますので、文章を理解しながら学習を進めることができます。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』 |
第3部は2人の人物の会話を聞きながらおこなう「会話シャドーイング」です。「友人同士の会話」「親子の会話」「会社での会話」などシチュエーションごとに9つの会話について練習します。第1部、第2部より少し難易度が上がり、テンポ良くリズミカルなシャドーイングに挑戦できます。会話には日常やビジネスでそのまま使える表現が使われているので、実際の会話に応用することができます。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』 |
第4部からは「長文シャドーイング」になります。第4部はイソップ物語やスピーチなどを題材としてシャドーイングをおこないます。第5部はさらに難易度が上がり、アメリカ政府が公式運営するラジオ放送VOA (The Voice of America) の音源でシャドーイング練習をします。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』 |
第4部からは、重要構文の解説がつきますので、文章の理解を深めながら学習を進めることができます。長文の読解が苦手な方でも解説を読んで理解をしながらシャドーイングの練習を続けられるように工夫されています。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』 |
やさしい日常英語から、ニュース英語まで
この本は、タイトルのとおりシャドーイングを「ゼロから」始める方を対象としていますので、比較的簡単な英語が使われています。内容も日常で使われる英語がメインですので、高校卒業程度の英語力があれば難なく学習を続けることができるでしょう。
第5部の「VOA生録英語シャドーイング」は他のセクションに比べると難易度が上がりますが、分からない単語は「語注」欄や日本語訳を見て確認しながら学習を進めることができます。
シャドーイングに向いた発話速度のCDが付属
発話速度を測定したところ、約145語/分でした(Chapter4の長文で測定)。語学書のCDとしては若干遅め~標準的な速度です。ナレーターは男性と女性の両方で、教材のCDらしく、はっきりとした発音で録音されています。
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宮野 智靖『ゼロからスタートシャドーイング』(CD1枚組) |
初心者向けの平易な英文を採用しているので、本書の指示どおりに練習していけば基礎的なリスニング力、スピーキング力が身に付きます。また、別の教材を勉強するときも、シャドーイングを大いに活用できるようになっているでしょう。
一日10分! 忙しい人もシャドーイングを習慣にできる
本書は、簡単な単語のシャドーイングから始めて、徐々に難易度を上げ、最終的にはVOAのニュース音声などの難易度の高い英語までをシャドーイングできるように段階的にレベル設定をしています。そのため、英語初級者の方でも学習しやすく、段階を踏んで無理なくリスニングやスピーキングの力をつけることができます。
また、学習を進めることで語彙力や文法力も身につくよう構成されている点もポインントです。最初から最後まで通して学習することで、総合的な英語力を身につけることができるでしょう。一日10分程度、コツコツと続けましょう。一日10分であれば忙しくて英語学習の時間がとれない方でもスキマ時間に無理なく続けられますので、シャドーイングを習慣にすることができます。
まとめ
- シャドーイングを「ゼロから」始められる。
- 難易度が少しずつ上がっていくので、無理なく学習できる。
- 英語を話すための筋肉を鍛えることができる。
- 一日10分の学習をコツコツ続ければ、ニュース英語も聞き取れるようになる。