始まりはレベル分けの「プレイスメント・テスト」から
上智大学に合格すると、入学式前に比較文化学部(当時の学部名)以外の生徒は全学部全学科共通の英語のレベル分けテスト、「プレイスメント・テスト」と呼ばれるテストを受けます。
その結果によって上級、中級、初級、基礎と4段階に分けられました。なお、執筆時点の平成28年3月現在ではもう少し細かいレベル分けになったようです。
プレイスメント・テストの内容
プレイスメント・テストの内容は上智大学の入学試験にリスニング問題が加わったイメージです。詳しい内容は忘れてしまっていますが、問題構成は1問当たり150~200行程度の長文読解問題が3~4問、文法・語法問題が大問で1~2問、スクリプト読み上げ時間がトータルで10分程度のリスニング問題が1問というイメージです。
長文読解問題、文法・語法問題の難易度はおおむね学部入試レベル程度、リスニング問題はおおむね国立大の入試問題クラスの難易度であったと記憶しています。
レベル分けの程度はどれくらいか
プレイスメント・テストのスコアは通知されませんでした。学生番号ごとに掲示板に上級、中級、初級、基礎のレベル分け結果が貼り出されるだけです。私は上級クラスになりましたが、クラスメイトや友人の話を総合すると、大体のレベルは以下のようなものでした。
上級クラス
帰国子女率80%前後。中には海外生活の方が長く、日本語より英語が得意という人もごくたまにいる。最低レベルはNewsweek程度の英語誌はわからないところがあっても最低限大意をつかめる程度の読解力・語彙力を持っており、会話はテーマによって得手不得手はあっても日常会話はゆっくりならできる程度。
中級クラス
大学入試対策の模試で英語の偏差値70前後の人が該当。読解力はないと入試問題自体解けず、そもそも入学できないので長文読解力や語彙力自体は上級レベルの帰国子女でない学生とあまり変わらない。リスニングが多少不得手で、プレイスメント・テストでスコアが伸び悩んだことが上級クラスと中級クラスを分ける分岐点と思われる。
初級クラス
大学入試対策の模試で英語の偏差値60~65程度の人が多いと思われる。一般入試組は最低中級クラスには入っていたので、一般入試組でテスト当日の体調が悪かった人や、推薦入学組で一発勝負のテストに慣れていない人が多い。
基礎クラス
指定校推薦で入ってきてしまったなどの理由で、高校の教科書以上のことはまともに勉強したことがない人が多い。模試の偏差値では60を切るレベル。
上級クラスの講義内容について
私は上級クラスに所属しましたので、上級クラスの講義内容について紹介します。ただ、担当講師によって講義内容は大きく変わるようですので、あくまで私が取った講義の内容です。
クラスの構成メンバーの傾向
1クラス当たり定員があり、大体40人~60人くらいが1クラスになります。上級クラスでは帰国子女率が大体5~7割くらいでした。多いクラスでは95%のところもあるようです。帰国子女ではない学生も、外国語学部英文学科など、英語はできて当たり前という学部学科の学生が多くを占めていました。
男性・女性比率では男性の方が圧倒的に少なく、男性2~20%、女性80~98%というクラスが多かったようです。
講義の際のルール
私が取ったのはスピーチクラスでした。指定テキストなどは特にありません。講師は外国人で、最初に「講義中の発言の際は日本語を使わず英語で話すこと。守れない人は単位を与えません」と注意を受けます。これは結構厳格に守られました。
講義自体は英文法や英文読解の方法を解説するというものではありません。そちらの方は自分で独学できて当たり前でしょうから、スピーチのテクニックを学び、実践回数を増やしてくださいという感じでした。
実際の講義
クラスは1年間にわたって行われますが、最初は講義の最初に数名を指名し、英語で5分程度の自己紹介をするように言われます。それに対してクラスのメンバーが興味を持ったことに対して質疑応答を英語で行い、最後に講師から講評と改善点の指摘を受ける、といったものでした。
残った時間はスピーチを行う際の身振り手振りのやり方、視線の使い方などの注意事項や、話の組み立て方やテーマの選び方といった説明を受けます。話の組み立て方の内容は一般的ですが、例えばZ会の速読速聴・英単語の「Opinion 1400」の収録記事のうち、意見を述べる「FOR」「AGAINST」セクションの構成が講義で言われた話の組み立て方に沿って書かれているなと思いました。
この内容が時期が進むごとに高度になっていき、5分のスピーチが10分、20分と増えていきます。
年度末の単位認定テストでは、他の講義の試験開始時期よりもずっと早く試験に入り、自由テーマで30分程度のスピーチをプロジェクタやスライドを利用して行います。話の組み立て方や身振り、視線といったテクニック面だけではなく、「なぜそのテーマを選んだか」、「取材は十分で説得力があったか」、「テーマはオーディエンスの興味を引いていたか」といったところまで採点されますので、本当に大変でした。
クラスのメンバーが選んだテーマは様々でしたが、政治論や経済論などあまりまじめなものを選ばず、「中央線の某駅前の屋台のおじさんの商売について」や、「下北沢のライブハウスに出ているインディーズバンドの紹介」などの、自分の興味があるテーマを選んでいました。
私も、「効率の良いウエイトトレーニングと体重コントロールの方法と実践」というテーマを、自分の体を実験台にしたデータや写真を元に話して単位を取りました。
上級クラスの講義についていく方法
上級クラスの講義は、語彙力や文法などは知っていて当たり前、または自分で勉強できて当たり前、そんなことは独学するものだと講師が考えている傾向が強いです。そのため、高校までの英語の授業のイメージで行ってしまうとほぼ単位を落としてしまいます。
帰国子女であればさほど苦労せずについていけると思いますが、帰国子女でもスピーチが下手だと単位をもらえていませんでした。そのため、帰国子女ではない日本人学生がついていくには、以下のような方法を推奨します。
多読をする
あらゆるテーマの多読をしました。例えばNewsweekやTIMEを定期購読してカバーストーリーだけは毎回全部読み、興味のなかった分野についても広く浅く知識をつけることを意識しました。
掘り下げる
興味のあるテーマ、私の場合は法律・経済・音楽でしたが、これらに関しては専門的な英書を読みました。専門誌だけではなく、海外の英語ロック誌を購入して読み、英語で自分の趣味や好きなことを「誰かに紹介することができる」くらいまでの知識をつけるよう意識していました。
日本語の本を多く読む
私は帰国子女でも外国人でもないので、当然英語よりも日本語の方が得意ですし、学生のときは英語の勉強ばかりしているわけにもいきません。他の科目でも単位は取らなければならないし、部活動・サークル活動やバイト、遊びの時間も大切です。そのため、岩波新書や講談社新書などを古本屋で買って多く読み、興味のあるものに関してはこれを英語で話すとどうなるかをイメージトレーニングすることをしていました。
社会人になっても、純粋に英語だけ勉強するよりも、自分の知識を広げつつ英語も勉強する方が良い結果を生むことが多いようです。
上智大学の英語は、上級クラスでも怖くはない
ここまで、上智大学の英語上級クラスの講義内容の一例を紹介してきました。
英語力だけでなくスピーチ力やプレゼン能力の基礎がついたので良かったと思ってはおりますが、私が取った講義は特に単位認定が厳しいことで有名だったようです。
他の講師ですと、「クラス内で数人ずつ指名されて、先生と5~6人で週末お酒を飲みに行き、内容はどうでも良いし出来も関係ないので、とにかく2時間英語で通せればOK」というようなクラスもあったと聞いています。(それはそれで対応力やアドリブが求められるので大変だと思いますが…)
あえて厳しい授業を取って社会人になってからの基礎を取ることも、少し砕けた傾向の授業を取って対応力を磨くことも無駄にはなりません。
大学生は社会人よりも自由に使える時間が多いと思いますので、英語の膨大な分野の中でも何か一つ、というものでも構いません。ご自分でものにしようと思ったことはマスターしていただきたいと思います。
そのご参考になれば幸いです。