質問
文法を気にするあまり、いざ話そうとすると言葉が出て来ません。聞き取りや、読み取りはある程度出来ますが、会話が全く上達しないのです。
単純に外国の方とリアルに接する機会がなく、話す機会が限られていることが原因だと思いますが、少ない時間でも効率的に英会話が上達する方法が知りたいです。
正しい英語を話そうとせず、まずは単語だけでも並べる感じでもその内上達するのでしょうか?勉強となるとどうしても受験英語になってしまいます。受験英語の呪縛から抜けるにはどうしたら良いでしょうか?
回答(さかえ)
あまり肩に力を入れないことも重要です。
もし機会があればネイティブや、ネイティブでなくても良いですから英語が得意な外国人の会話をじっくり聞いてみてください。日常会話ではそれほど難しい言い回しや、受験英語風に言うなら高度な構文を使って話しているわけではありません。実際に日本国内に限れば、外国人と英語で話す際も高度な構文を使わず、中学校レベルの構文に言い換えることでもかなりの場面に対応可能です。
聞き取りや読み取りはできるということで、文法も含めて学習をしっかり積んでこられているのだと思います。ただ、それにとらわれ過ぎて常に「常に文法的に正しい英語を話さなければいけない、高度で複雑な構文を使った方が良い、言い直しや詰まるのはもってのほか」などと自分にプレッシャーをかけていませんか?
会話は書き言葉で必要があるときと違い、ピリオドまでが長い文章でなくても良いのです。日常会話でしたらやたらとピリオドまでが長いと、相手にとって分かりにくくなってしまいます。
会話と同じ話し言葉で自分の考えを伝える技術を解説する英語スピーチ技術の講義においても、多くは「一文は聞いている人に伝わりやすいように、あまり長くない方が好ましい。伝えることを目的とするスピーチなら構文はできる限りシンプルに」と教えています。
大学の時、私は講師が外国人のスピーチクラスを取りました。指名された際や課題発表の際は原稿を読むことは許されず、A4用紙1枚にスピーチ構成を書いたメモだけで10分~20分程度のスピーチでしたが、そのメモにキーセンテンスを複雑な構文かつ長い一文で用意していった際は、「わかりにくく伝わっていない」として低評価をもらった経験もあります。
例えば、次の英文はアメリカのバラク・オバマ大統領の第二期目に議会で行った演説の一部です。英文がどの程度の長さなのかに注意してみてみたいと思います。
We may do different jobs and wear different uniforms, and hold different views than the person beside us. But as Americans, we all share the same proud title: WE ARE CITIZENS. It’s a word that doesn’t just describe our nationality or legal status. It describes the way we’re made. It describes what we believe.
(和訳)
私たちは違う仕事をして、違う制服を着ているかもしれません。隣人とは違う考え方を持っているかもしれません。しかし、アメリカ人として私たちは誇らしい称号を共有しています。それは『私たちはアメリカの市民』という称号です。それは私たちの国籍や法的身分を示すだけではありません。私たちがどのように形作られたのかを表し、私たちが何を信じるのかを表しているのです。
演説全体の中でキーとなる部分のうちの一つだけを抜粋しましたが、英文をよく見てみると、最後の2文で”It describes…”を2回続ける対句法を使ってスピーチにリズムをつけるというテクニックは使っていますが、それほど難しい構文や文法は使っておらず、一文の長さもかなり短いことに気づくのではないでしょうか。
アメリカ大統領が議会で行う演説でも、良く分析してみると最も伝えたい核の部分はあまり難しい言葉も構文も使っていないのです。それは伝わりやすさを優先しているためです。
会話も同じで、書き言葉ではないのでできるだけシンプルに話す方がベターで、その方が伝わります。間違いも少なくなるでしょう。
練習方法の例としては、英会話系の学習書やラジオ、podcastなどを参考に練習しつつ、とりあえずは単語の羅列からでも良いですし、中学レベルの文法を使って言いたいことをどう話すか考えてみるというところから始めるると良いでしょう。日常会話なら実は中学レベルの文法知識があれば、言いたいことを伝えることができる場合が多いです。
また、例として挙げたように数多くのスピーチを分析することでも「話し言葉の場合はこの程度のシンプルな構文でも十分伝わるものだ」と実感できるでしょう。